#73 友情とは ページ23
『産屋敷殿』
私は包帯が落ちかけているお館様の手をしっかりと握る。
『不躾な質問であることは重々承知の上ですが、どうかこの謝花月人と友人になってください!』
医者という立場ではなく友人という立場となって私はお館様の側にいたい。
お館様はわけが分からずポカンとしていたが、すぐにふっと笑った。
「突然だね」
『はい』
「君は…」
『月人です』
「月人は…どうして私と友人になりたいのかな」
『友情に理由が必要ですか?これをしたら友達だと断定する確たる証拠がなければ友達になれませんか?』
お館様はまばたきを繰り返す。
『まずは対話を交わしてからが真の友情なのではないですか』
お館様は少しだけポカンとしていたがすぐにふっと笑ってくれた。
「月人は面白い子だね」
『そういう貴方も』
私が笑うと産屋敷も笑ってくれた。
そこから私は産屋敷と小一時間話した。
たったそれだけの時間は私にとっても産屋敷にとっても、まるで十年以上の親友になっている気がした。
それほどまでに私は心を許せる人と出会えた。
顔が無惨くんに似てて名前呼びしそうになるのをなんとか堪えながら。
「月人、君はどうして医者になったんだい?」
『とあるやつの病を治すためだ』
産屋敷はニコニコと笑っている。
今世の私は鬼狩りに深く介入することはあまりしたくない。
だけど無惨くんに会える率が少しでも上がるのであれば、鬼狩りの医者として入隊するのもいいかもな。
『私がここに入隊したら怪我人を治癒することができる。私もその鬼とやらを実験材料にして研究もできる……入隊はできないか?』
私がそういうと産屋敷は目を見開いた。
スッと目を伏せたのはしばらくしてから。
「……そうだね。確かに月人がいたら子供たちの怪我が治るのが早くなる。でも、月人には治すべき人がいるんだろう?」
『そうだけど……あいつは、』
ゴホ、と口から大きな咳が出た。
胸を抑えて私は一瞬何がなんだか分からなくなる。
ゴホ、ゲホ、ゴホッ。
私は前かがみになり、咳を止めようとするが止まらない。
産屋敷が私の背中を優しくさすってくれる。
ボタ、ボタッ、ポタ……
口から花弁が落ちてきた。
いや、吐き出したの間違いか。
「月人」
産屋敷が私に何か言おうとしている。
私は喉につっかえた花弁だか何かに息ができなくなり、そのまま倒れた。
私はまだ、死にたくない。
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7Tw2ErnmNI22864(プロフ) - 更新してください (2月11日 13時) (レス) id: 28c0945122 (このIDを非表示/違反報告)
鶴来 - 初めまして、主人公の性格がどタイプで甘露寺ちゃんみたいにキュンキュンしました!すみませんしばらく更新されていませんのにとても好きになり感想を書かせていただきました!体調に気おつけてお過ごしください (2023年4月27日 1時) (レス) @page31 id: 5619572143 (このIDを非表示/違反報告)
nayu - 面白いです!そして好き!これからの物語も楽しみに待っています!体調に気を付けてお過ごしください! (2021年10月19日 21時) (レス) @page31 id: 4992787aaf (このIDを非表示/違反報告)
叶翔 - 好きです!面白いです!続き待ってます! (2021年9月11日 17時) (レス) id: 07ae9650d0 (このIDを非表示/違反報告)
推し100% - 続き全裸待機で待ってます! (2021年6月12日 13時) (レス) id: 4b24d326f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年6月6日 13時