#62 寒い冬の日 ページ12
幸せが壊れる日はいつも突然だ。
米一揆が起こり、隣にいる男性の米屋が被害にあった。日本史に出てきた一揆を初めて見たわ。
暴動を抑えるためにあの手この手を尽くしているお偉い方を(正確には見えないが)さぞかし大変なんだろうと横目で見ていた。
幾日かしたとき、隣の家族が夜逃げをした。
隣の家族の行方を教えろ、と役人が私に言ってきたので「夜逃げした人の行く末は決まってんだろ」と思いつつ「知りません」と言っといた。
医者の免許を取れたのは19になったとき。
流行病は未だに治らず、死にもしないで生かされ続ける私はぶつくさ文句を言いつつも薬作りをする毎日を繰り返している。
鬼に会って毒薬投与して家に持ち帰っていたらある日人に見られた。
なので「伝染病にかかってる人です!」と嘘ついて私の家に寄らないことを告げると人はいなくなった。
まぁそれでもこの街に医者は私しかいないから病人が訪ねてくるのだが。
人払いしたところで無駄だと気づきつつ、鬼から人間に戻る薬を開発中だ。
──あれは寒い冬の日だった。
私は医者として羅生門河岸に来ていた。
遊郭の最下層で働く人たちは病人だらけで、毎日バタバタと死んでゆく。
【未来予知】のせいでこの人が何分後に死ぬかをわかってしまった。
夜になり、帰り道を歩く際も、道端には人が横たわっている。
この世に生まれただけでも幸せなのに、どうして満足な食事もできずに死んでしまうのか。
悔しくて悔しくてたまらない。
さした傘に積もる雪を落としながら歩いていたら小さな声が聞こえた。
私は気になってそこに行くと、そこには薄い藁を身にまとう子供がいた。
「約束する。ずっと一緒だ。絶対離れない。ほらもう怖くないだろ?」
私は幼い二人の子供が身を寄せ合って寒さをしのいでいる姿を見て、戦国時代のときと同じ情景を思い出した。
あのときもあの子は寒がっていた。
あの子は私が羽織をあげたら喜んで兄弟のとこに行ってしまった。
今ここでこの子たちを見捨てたら……この寒さで朝を向かえることなく死ぬのではないか?
そのとき、私の視界に二人が死ぬ姿が写った。
黒焦げになった女の子と泣き叫んでいる男の子。今目の前にいる子供だ。
『……君たち』
私はしゃがんで二人に声をかけた。
兄妹らしい二人は顔を私に向ける。
『一緒に来ないか?』
傘に積もる雪が冷たく重く感じた。
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7Tw2ErnmNI22864(プロフ) - 更新してください (2月11日 13時) (レス) id: 28c0945122 (このIDを非表示/違反報告)
鶴来 - 初めまして、主人公の性格がどタイプで甘露寺ちゃんみたいにキュンキュンしました!すみませんしばらく更新されていませんのにとても好きになり感想を書かせていただきました!体調に気おつけてお過ごしください (2023年4月27日 1時) (レス) @page31 id: 5619572143 (このIDを非表示/違反報告)
nayu - 面白いです!そして好き!これからの物語も楽しみに待っています!体調に気を付けてお過ごしください! (2021年10月19日 21時) (レス) @page31 id: 4992787aaf (このIDを非表示/違反報告)
叶翔 - 好きです!面白いです!続き待ってます! (2021年9月11日 17時) (レス) id: 07ae9650d0 (このIDを非表示/違反報告)
推し100% - 続き全裸待機で待ってます! (2021年6月12日 13時) (レス) id: 4b24d326f9 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年6月6日 13時