#43 第二の死因 ページ43
黒死牟サイド
いっそのこと「お前のせいだ」と責めてくれれば区切りがつくというのに、何故しない。
鬼を家に招くなど、元鬼狩りとして不用心にも程がある。
『……そうか。来ないのか』
姉上は小さく微笑んだ。
『巌勝が決めた道だ。私が干渉することではないな……戌亥もそう思ってくれてるだろう』
姉上は微笑みながら抱えている壺をまた撫でた。
それは……もしかして、骨壺か。
元恋人の骨がそれに入っているのか。
黒死牟「骨壺ですか…?」
『うん。土に埋めたままだといつか掘り起こされるから骨壺に入れたのさ』
だから大事に抱えていたのか。
『巌勝。すまないが通してくれないか。私はお前と戦う気も逃げる気もない。戌亥を安全な場所に安置しに行きたいだけだ』
『安心しろ。私が今晩お前と会ったことを縁壱や他の人に言うことはない。そんなのしてなんの意味がある。誰にも話さんし何も見てない。だからどいてくれ』
……姉上は昔から、口が堅くて辛いことや悲しいことがあっても誰にも頼らない性格である。
本当のことを言っている、とすぐに理解した。
私が道の脇にそれると姉上は礼を言ってきた。
そして姉上が歩いていくのを後ろから見ていたら、背後から「いたぞ!鬼だ!」という大声。
後ろを向くとそこには十人程の鬼狩りが刀ではなく弓を構えていた。
一斉に向かってくる矢を切ろうと刀をぬこうとしたとき、姉上が私の前に現れた。
両手を広げて私を庇うように、私と鬼狩りの間に立ち上がっている。
『…む、ざん…くん』
膝をついて背を丸めた姉上の背中には、何本も矢が刺さっている。
腕にも足にも刺さっている。
鬼狩りが次の弓を構えようとしたとき、私は走ってその頸を斬り落とした。
……この矢には日輪刀の鉱石が使用されている。
この弓矢は姉上が考えたものだ。
提案して自分から却下した矢。それなのに矢は姉上の体を貫いた。
姉上は元仲間に殺されるのか?
全員を斬り捨て姉上の方に戻ると、姉上は私を助けるために地面に置いていた骨壺のほうに体を引きずっていた。
私はその骨壺を姉上に渡した。
骨壺を抱き締めながら姉上は。
『ありがとう…巌勝……』
涙を流しながら私にまた礼を言った。
『──……無惨くんに…会いたかった……なぁ…』
あのお方の名前を最後に、姉上は事切れた。
姉上の口に血を注げば今なら間に合うかもしれない。
試したが姉上はピクリとも動かなかった。
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スイレン(プロフ) - この作品大好きです!続きめっちゃ楽しみです!更新頑張ってください! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお!こんなにもいい作品があったとは!ありがとうございまs(((続きも頑張ってください! (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです!!続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い!気が狂いそうになるのも分かります!(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年5月16日 6時