#35 正義と残酷と慈愛と ページ35
朝には帰ってこれたのでそのまま鬼を斬ったことを報告した。
一度就寝したあとに呼吸の練習をしていたら、縁壱が近づいて来た。
私以外の人間には今の縁壱の表情が喜んでいると解らないらしい。
縁壱「姉上。昨夜、兄上とお会いしました」
まじか!!
『巌勝にか!?だが、どうして?』
縁壱「野営していたところを鬼に襲われていました。私が駆けつけたので兄上は助かったのですが、兄上の配下が死んでしまいました。来るのが遅れてしまい…」
縁壱は人を助けられなかったのが悔しくて悔しくてたまらないのだろう。
私も間に合わなかったことはある。
巌勝の配下が死んだ話をしたときの縁壱の顔は暗くなってしまった。
縁壱の鬼に対する……無惨に対する強い怒りを感じる。
『人を死に追いやった鬼を許さないのは誰しも同じ思考だ。だけどな、それは次の被害者を出してしまう思考にもなるんだぞ』
私がそう言うと縁壱は悩ましげな目を向けた。
『「自分の行動は正義だ」と思ったとき、人間は一番残酷になる。守るという言葉は人間しか使わない。だからな、縁壱。聞いてくれ』
私は自分より背の高い弟を抱き締めた。
寺に行くと言った縁壱の背中は小さかったのに、いつの間にこんな立派な大人に成長したのだろうか。
『みんなで手を取り合って話せる場を設けなければ、私たち人間はいつまで経ってもお互いを信用できない生物なのだ』
無惨が憎い。
それ以前に、戌亥を守れなかった己が憎い。
なんのために鍛えた力だ。
縁壱は私の背に腕を回してくれた。
縁壱「姉上。姉上は人や鬼関係なく同情を向けるのですね」
『…馬鹿だろう、私は』
縁壱「…いいえ。そんなことありません。姉上は優しいお方であります」
抱き締めるのをやめて縁壱を見た。
*縁壱サイド
慈愛の満ちた姉上の瞳。
変わりのない姉上の心。
分け隔てなく物事を教えてくれる姉上。
姉上には何が見えているのだろう。
106人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「鬼滅の刃」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
スイレン(プロフ) - この作品大好きです!続きめっちゃ楽しみです!更新頑張ってください! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお!こんなにもいい作品があったとは!ありがとうございまs(((続きも頑張ってください! (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです!!続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い!気が狂いそうになるのも分かります!(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年5月16日 6時