#31 どこにいたの ページ31
私が鬼狩りとなり、鬼を殺すこと早ニ年。
刀で鬼を斬る感触も大分慣れた頃だった。
また急病人が運ばれてきたかと思ったら、そこには生死不明だった弟の縁壱が煉獄と共に門から入って来たのだ。
あまりの光景に私は目を見開いた。
あの耳飾りは縁壱のだ。母が縁壱のために作ったものだ。
『縁壱！！縁壱なのか！？』
私が声を張り上げると縁壱がこちらを見た。
縁壱「……姉上」
『縁壱！！』
私は走って縁壱を抱き締めた。
背丈は私よりも高くなっている。こんなに大きくなって……一体どこにいたんだ。
どうして寺に行かなかった。会わなかった十年間何をしていた。怪我はしてないか？ちゃんと食事をとってるか？縁壱、縁壱……
私の弟の縁壱よ。
縁壱、お前が生きていてくれて嬉しいぞ。
『──生きてて、良かった…』
縁壱の着物を握り締めながら私はそう言った。
『話したいことが沢山ある。だから、その、なんだ…』
縁壱「…はい」
『今夜は寝させないぞ』
縁壱「はい。私も姉上を寝させません」
煉獄がなぜか顔を赤くしていたがどうしたのだ？
私は縁壱が風呂に入っている間に米を炊き、風呂から上がった縁壱に食事をさせた。
縁壱は鬼狩りになりたいと言ってきた。
聞けば、臨月の妻の"うた"という女性が鬼に殺され、遺体を十日程抱えながらぼんやりしていたところを煉獄に話しかけられ、遺体を弔ったそうだ。
縁壱はどこまでも続く空の下を走りたかったから寺に行かなかったという。可愛すぎないか。
"うた"から自分の視覚は他人と違うことなどを聞いたという。元いた世界の私の視覚を縁壱が持ってるから私はわかるんだけどなぁ…
私も縁壱に自分の話をした。
継国家の領土が改良したこと、巌勝が子供に恵まれたこと……戌亥のことも話した。
縁壱は何も言わなかったが、賢い子だから私の言いたいことが全部解っているのだろう。
私は縁壱を抱き締めた。強く強く、存在を確かめるように何時間も抱き締めた。
夜が明けて朝になった頃、ようやく放したら縁壱は寝ていた。
子供の頃となんら変わりない縁壱の寝顔を見てくすりと笑う。
額の痣を撫でて髪に指を通し、私も縁壱の隣に眠った。
起こしにきた煉獄がまた顔を赤くしていたのは後日談となる。
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スイレン(プロフ) - この作品大好きです！続きめっちゃ楽しみです！更新頑張ってください！ (2020年6月5日 22時) (
レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお！こんなにもいい作品があったとは！ありがとうございまs(((続きも頑張ってください！ (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです！！続き楽しみにしてます！！更新頑張ってください！！ (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い！気が狂いそうになるのも分かります！(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無し61903号 | 作成日時：2020年5月16日 6時
