検索窓
今日:16 hit、昨日:8 hit、合計:120,745 hit

#4 私は私だ ページ4

「怪しいものなど食えるかッ!」


月彦はそう怒鳴った。

私は箸で壺の中にある果物を掴むなり、月彦に見せるように食べた。

三回果物を食べて私は言う。


『毒は入ってない。だから食え。食わねばそなたは死んでしまう』


私はどこかで聞いたことがあるセリフを口にすると月彦は口を閉ざし、壺の中身を見てきた。


「これは……蜜柑か?」

『そうだ。おとなしくビタミンCを取るんだ』


私は別に用意しておいた箸を取り出して月彦にほどんど強制的に箸を持たす。

月彦は嫌そうな顔をしていたが女中が戻るまで蜜柑を食わせ続けた。

いつの間にか月彦の咳は止んでいた。

私は月彦が手ぬぐいで汗を拭き取るまでの間、隣室で腹筋をしていた。

呼ばれたので腹筋をやめて行くとそこには月彦が座っていた。


『咳はやんだか?』

「あぁ…」

『ならばよい!』


私は壺を月彦に渡した。


『蜜柑を毎日食べるのだ。そしたら肌が綺麗になるし貧血も治る。そのうねった髪の毛も綺麗になるぞ!』


はっはっは!と笑うと月彦は不思議そうに眉を寄せた。


「ゆ…雪彦。貴様、口調が変わったか?」

『なんだと?私は私だ』

「前は自分のことを「僕」と言っていたではないか。それにそんな大声で笑うことなどなかった」

『だからどうしたというのだ?私は私だ。それ以外に何者でもない』


男となった短い髪を風に靡かせながら私は言う。


『私は雪彦!そしてお前は月彦!彦が同じとはなんとも奇遇!そして同じ男子(おのこ)ならば尚更のこと!』


また大声で笑うと月彦もつられて少し笑った。


「お前はいつも和歌を詠んでいたが、今日は詠まぬのか?」

『今日はいい。私はお前と腕相撲や短距離走をやりたいのだ』

「たんきょりそうとは…?」

『走ることだ』


すると月彦が怒った顔つきをした。


「私の体が弱いことを知ってての当てつけか」

『走れないのか?ならば腕相撲をしよう』

「は?お前は何を言っているんだ?私は病人だぞ。私に近づけば病が伝染(うつ)るかもしれないのだぞ?」

『それなら私に伝染してしまえばいい。私にその病を移せ。そしたら一緒に風を感じながら走ろうではないか!』


私がそう言うと月彦は目を見開いた。

私はこの平安時代で【第二の人生】を謳歌しようではないか!!


*

☆第二の人生、始まります──!

#5 別人と外の世界→←#3 隣人宅に訪問



目次へ作品を作る感想を書く
他の作品を探す

おもしろ度を投票
( ← 頑張って!面白い!→ )

点数: 10.0/10 (77 票)

この小説をお気に入り追加 (しおり) 登録すれば後で更新された順に見れます
106人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告

感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)

ニックネーム: 感想:  ログイン

スイレン(プロフ) - この作品大好きです!続きめっちゃ楽しみです!更新頑張ってください! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお!こんなにもいい作品があったとは!ありがとうございまs(((続きも頑張ってください! (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです!!続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い!気が狂いそうになるのも分かります!(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)

作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ

作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年5月16日 6時

パスワード: (注) 他の人が作った物への荒らし行為は犯罪です。
発覚した場合、即刻通報します。