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#28 深紅の夜 ページ28

戌亥はいつも腰に刀を持っていた。

戌亥の腕力だけで私を守れると思うが、護身用の武器なのだろう。

私も小刀は懐に入れているから、いざというときは二人して戦えるな。

といっても、高身長の私と戌亥に闘いを挑むやつなんていないけどな。

深夜、戌亥の家の一室で寝ていたら、戌亥に起こされた。

時刻は夜だというのに、戌亥は刀を持っていた。


戌亥「雅はここにいて」


それだけ言うなり、襖を開けて足音立てずに戌亥は行ってしまった。

私は目を擦って起き上がり、小刀を持つ。

戌亥の後を追うために襖を開けたら、叫び声が聞こえた。

裸足で声の方向に走ると、そこには戌亥が刀を握り締めて額から角を生やした鬼と闘っていた。

先程の叫びは戌亥の声だった。

ゴロン、と戌亥の右手首が転がった。

あのとき食べた小ぶりの芋のように。


『貴様アァ!!』


小刀を握り締めて私は戌亥の仇を打つために走る。

首に容赦なく私は小刀を突き刺したが、鬼は倒れなかった。

戌亥が左手に持った刀を振り、鬼の頸を斬った。

寝間着に飛び散った血なんかに構うことなく私は戌亥の側による。

右手首を切り落とされた箇所を早く手当てしないと出血多量で死んでしまう。


『戌亥、戌亥!』

戌亥「雅、危ない!!」


戌亥が私を庇った。

地面に仰向けになる私を庇うように、戌亥が私の上に覆い被さっている。

ポタ、ポタと戌亥の首から滴った血が私の寝間着の胸を染めてゆく。

まるで月彦こと無惨から心臓を鷲掴みにされたあのときのように。


戌亥「…みや、び…」

『い…嫌だ……戌亥…いぬいぃ』


戌亥の首はえぐられていた。いつ、いつえぐられたの。もしかして、私を庇ったせいで?

ドサ、と戌亥の体が私に体重を預けるように倒れた。

戌亥の背後には、頸を斬ったはずの鬼が立ち上がっていた。

私は戌亥の体を握り締める。

心臓がバクバクと早鐘のように鳴っている。

殺させない、戌亥を絶対殺させない。

なんだよ、お前何なんだよ。どうして戌亥にこんなことしたんだよ。戌亥が何したっていうんだ。

そのとき、誰かが鬼の頸を斬ってくれた。鬼の体は灰のように崩れた。

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スイレン(プロフ) - この作品大好きです!続きめっちゃ楽しみです!更新頑張ってください! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお!こんなにもいい作品があったとは!ありがとうございまs(((続きも頑張ってください! (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです!!続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い!気が狂いそうになるのも分かります!(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年5月16日 6時

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