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#27 二人の恋路 ページ27

私が戌亥と過ごした時間は一年程だった。

一年間という短い間だったが、とても有意義な時間を過ごせた。

巌勝は家庭を持ち、子供も授かったようだ。

私が二十ニのとき、戌亥はこう言った。


戌亥「結婚が嫌なら俺はしないよ」


私のわがままに付き合わせてしまったことが苦しかった。


『戌亥は私と家庭を持ちたいと思わないのか?』

戌亥「人が嫌がることはしないんだ……といっても、雅にしつこく手紙を送ったのは反省してるよ」

『あれは確かにしつこかったぞ』

戌亥「ごめんごめん。だって、雅から届く手紙一つ一つが綺麗な文字で書かれてるし、俺のことを心配してくれる内容だったから。手紙の端にいつも花の絵を描いてるのだって見てるよ」


戌亥がその花一つ一つに綴った花言葉の意味を理解しているかは解らない。

今私は、戌亥の家にいる。

縁の下で太陽の光を浴びながら結婚の話をしている最中だ。


戌亥「雅に毎日会えるから、手紙を受け取らない毎日が不思議でたまらないよ」

『手紙が欲しいのか?』

戌亥「雅がくれるものは俺の宝物さ」

『宝物か…』


私の宝物はなんだろう。

私が戌亥といるたびに、自分が女の子であると実感する日々が続く。

女だとか男だとか、性別でこだわることを捨てたはずなのにな。


『……だ』

戌亥「ん?」


首を傾げる戌亥の顔を見ながら私ははっきり言う。


『好きだ』


自分の気持ちに正直になろう。


『戌亥が好きだ。そう何度も言わせるな』


顔を背けずまっすぐ見ると、戌亥の顔が赤くなる。


戌亥「わ、わっ…わわわ……」


戌亥は突然のことに狼狽しながらも、私の肩をがっしり掴んだ。


戌亥「俺も好きだ!雅が好きだ!!」

『うるさいっ!』

戌亥「雅!!」

『うわっ、わぁー!』


私の背中に両腕を回した戌亥の馬鹿力によって、二人まとめて床に体を転がした。

頭を打たないように二人同時にお互いの頭に手を回していた。

それに気づくと二人して笑い合った。


*

初めの戌亥さんはAさんの筋肉に惚れて結婚を申し込みましたが、決闘に負けて心に火がついたみたいです。

それで手紙をするうちに、Aさんも戌亥さんも筋トレが好きで、筋肉愛好家としてお互い意気投合して八年の歳月を経て、二人はまた巡り合ったのです。

戌亥さんの名前の由来は「射貫いて」から取りました。

「貴方に惚れたこの心を射貫いてほしい」という意味です。

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スイレン(プロフ) - この作品大好きです!続きめっちゃ楽しみです!更新頑張ってください! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお!こんなにもいい作品があったとは!ありがとうございまs(((続きも頑張ってください! (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです!!続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い!気が狂いそうになるのも分かります!(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年5月16日 6時

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