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#24 姉上、嫁に行く ページ24

巌勝サイド

姉は二十一、私が十四の時だった。

姉が突然『巌勝、お前が家を継げ』と言ったのだ。

姉は途中で物事を放り投げるなど今までなかった。

なんにでも全力で取り組み、全てなぎ倒して自分のものにしていった姉が突然どうして?


『巌勝。実はな……縁談を受けようと思うのだ』


部屋で二人、正座しながら姉はそう言った。


『家を継ぐのは男の役目という考えは嫌いだが、この時代はそれが正しい。巌勝にはすまないと思う』


姉はこの時代に似合わない人だと前から感じていたが、姉は私よりずっと前からそれが解っていたようだ。


『私が十三の頃。巌勝の一つ下の頃だな。嫁ぎ先の男に結婚してくれと詰め寄られたのだ。勝負には勝ったが、相手は私のことが忘れられないらしく、未だに結婚していないのだ』


もしかして姉はその男のことが好きなのか?

気にかけているのか?


『私は四年間ここで皆を幸せにしてきた。配下にはやり方を教えといた。後で巌勝にも教えるから心配せんでいい』

『話を戻そう。私を一途に想ってくれる男だ。並な精神の持ち主ではあるまいな。あの勝負から八年経つというのに、まだ手紙を送りつけてくるのだ。だから少し話をしてきた』


姉はいすまいを正すなり、


『私、継国雅は嫁に行くとしよう』


そう言って笑った。

女の子のような可愛らしい笑みを浮かべて姉は心の底から微笑んだ。


『だからこの家の主導権はお前が握るのだぞ継国巌勝……お前を一人にさせてしまうことはすまないと思う。縁壱にも聞かせたかったな』


姉はどこまでも私たち双子のことを気にかけていた。

そこで私は気がついた。

姉は私たち双子が生きられやすい環境を作るために父上に決闘を申し込み、怪我も陰口も負ったのに挫けることなく突き進んだということを。

姉は私に次に繋ぐバトンを渡したのだ。私がやりやすいように。


『花嫁姿はまだ見せられないが、私は相手の家に行くとしよう。日取りが決まったら連絡するから楽しみにしてるんだぞ』


姉はそう言って部屋から出て行ってしまった。

私は一人、部屋の中で姉の言葉を反芻していた。


巌勝「……何にも、なれなかった」


頼ってほしいと言ったのに。

#25 今が大事なとき→←#23 勝負の行方



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スイレン(プロフ) - この作品大好きです!続きめっちゃ楽しみです!更新頑張ってください! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお!こんなにもいい作品があったとは!ありがとうございまs(((続きも頑張ってください! (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです!!続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い!気が狂いそうになるのも分かります!(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)

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作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年5月16日 6時

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