#21 寺へ発つ ページ21
夜中厠に行き、廊下を歩いて部屋に戻ろうとしたら巌勝と縁壱がいた。
二人はなにやら話し込んでいる。
縁壱「俺はこのまま寺へ発ちます」
縁壱から信じられない言葉を耳にし、私は夜中であるにも関わらず廊下を走った。
走ると品がないと言われ、父から打たれたことがあったがそんなの関係ない。
すると縁壱が後ろを振り返り私を見た。
縁壱「姉上。姉上にも別れの挨拶を」
『馬鹿言うな縁壱。何故寺へ発つ必要がある。お前が出て行く必要などない』
縁壱「姉上。母上が身罷られました」
……なんだと？
私はこの時代に来て、この時代の教育を受けてきた。
身罷る。それは死んだと言うことだ。
母が……死んだ？
私が固まっていたら縁壱は言葉を続けた。
縁壱「仔細は側務めの"いと"にお聞き下さい。頂いた櫛と笛を姉上と兄上と思い、どれだけ離れていても挫けず日々精進致します」
櫛と笛を宝物のように布に包んだ縁壱はそれを懐にしまった。
『縁壱……本当に行ってしまうのか』
縁壱「はい。姉上、兄上。どうかご無事で」
『……そうか…達者でな、縁壱』
私はもう、引き止めることはしない。
縁壱が決めたことだ。私は縁壱の意志を尊重するとしよう。それが姉としての務めだ。
私が笑うと縁壱も笑った。私は一時的な別れとして縁壱を抱き締めた。
そして縁壱はほとんど荷物も持たずに寺へと歩き出した。
夜中だというのに灯りも持たずに歩く後ろ姿は七歳の背中に見えなかった。
その背中は暗闇に消えてしまった。
あと三年だと思っていたのに……私はどうやら判断が遅すぎたようだ。
巌勝にもう寝なさいと言ってから私は"いと"から仔細を聞く。
母は病で亡くなったと聞かされた。
もう夜遅いから寝てくださいと言われ、私は部屋に戻った。
布団に入って母の死を考えながら縁壱の笑顔を思い出した。
私の弟かわいすぎないか？山賊とかに狙われないかな？大丈夫かな？やばい、心配になってきた。
心を少し落ち着かせよう。
……母が死んだ。
私はなぜか悲しくなかった。どうしてだろう。自分を産んで、優しくしてくれた母なのに。不思議でたまらない。
……巌勝は寺へ発つと言う縁壱に何も言わなかったな。
巌勝は月彦こと無惨のようにプライドが高いから、もしかして縁壱の剣技の強さに心が折れかけているのかな。
巌勝は縁壱に嫉妬しているのか？
まさか、な。と思いながら私は目を閉じた。
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スイレン(プロフ) - この作品大好きです！続きめっちゃ楽しみです！更新頑張ってください！ (2020年6月5日 22時) (
レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお！こんなにもいい作品があったとは！ありがとうございまs(((続きも頑張ってください！ (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです！！続き楽しみにしてます！！更新頑張ってください！！ (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い！気が狂いそうになるのも分かります！(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：名無し61903号 | 作成日時：2020年5月16日 6時
