#19 よくぞ言った ページ19
巌勝と縁壱が七歳で私が十四の時。
私は巌勝と一緒に庭で素振りをしていたら、松の木の影に縁壱が立っていた。
休憩するついでに話しかけようとしたら。
縁壱「兄上の夢はこの国で一番強い侍になることですか」
なんと縁壱が喋ったのだ。
初めて口を利いたと思えば流暢に喋りかけられた。
巌勝は驚きのあまり木剣を地面に落としてしまった。
『縁壱!!喋れたのだな!!』
縁壱「姉上の夢はなんですか」
『私の夢は国家転覆だ!なんちゃってな!あっはっはっはっは!!』
笑いながら巌勝が落とした木剣を拾った。
縁壱「俺も兄上のようになりたいです。俺はこの国で二番目に強い侍になります」
『よくぞ言った!!それでこそ私の弟だ!!』
縁壱の初めての笑顔を見るなり私は木剣を左手に持って右手で頭をクシャクシャにするように撫で回した。
縁壱はあと三年で寺へと出されてしまう。
その前に私が父を隠居させて寺へ行かせないようにしないと。
時間はあと三年しかない。早く筋肉つけないとな。
縁壱とそのあと少し話をしたら、縁壱はまたあの部屋に戻ってしまった。
さぁ素振りをしようとしたら巌勝に話しかけられた。
巌勝「姉上。縁壱は十になったら寺に行くとわかっておるのでしょうか?」
『巌勝。お前は自分の弟の夢を壊すつもりなのか?』
巌勝「えっ?」
『あの子は全て解ってるんだ。承知の上で私たちを悲しませないためにああ言ったんだ。縁壱の気持ちを汲み取って理解するのが私たち上の子の役目だ』
『それを私たちが壊してはならん。巌勝も侍になりたい夢を壊されたら嫌だろう。剣の道を極めたいのにいきなり食事処屋になれとか言われてみろ。誰だって逃げ出したくなる……私もかつてそうだった』
最後はポツリと呟いた言葉だったが、どうやら巌勝は聞こえたみたい。
『いつか時代が進めば価値観は変わる。言葉遣いも服装も建物も食事も教育も何もかもだ。時代とは記録だ。記録がなければ学べない。人々の記憶に存在しなければならない。私たちはその記録の一部に過ぎないのだ』
巌勝は私の言葉が解らないのか、目を開けてただじっとしている。
私は木剣を渡した。
『だから強くなり記録に残すのだ。いいか巌勝。お前は強い男になる。私を越していけ!私を踏み台にするのだ!さすれば明日の日の出はお前のものだ!いくぞッ!!』
私は木剣を構え直した巌勝に斬りかかりに行く。
今だけは二人の姉を演じさせてくれ。
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スイレン(プロフ) - この作品大好きです!続きめっちゃ楽しみです!更新頑張ってください! (2020年6月5日 22時) (レス) id: 712cc87224 (このIDを非表示/違反報告)
弍神 - うおおおおおおお!こんなにもいい作品があったとは!ありがとうございまs(((続きも頑張ってください! (2020年6月4日 23時) (レス) id: ea6df43fbb (このIDを非表示/違反報告)
きょうちゃん - めちゃめちゃ面白かったです!!続き楽しみにしてます!!更新頑張ってください!! (2020年6月4日 16時) (レス) id: 69a8ce92b1 (このIDを非表示/違反報告)
ふりこ(プロフ) - これすごい面白い!気が狂いそうになるのも分かります!(笑) (2020年6月4日 16時) (レス) id: ae6073fefe (このIDを非表示/違反報告)
綾鷹(プロフ) - 毎度のように続きが気になって狂いそうです。笑笑 (2020年5月23日 13時) (レス) id: 9dc1f8537e (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:名無し61903号 | 作成日時:2020年5月16日 6時