チューベローズの恋人【呪術廻戦】

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高専の近くにある大きくて古い病院。

任務で怪我した者や一般の病院では治療不可の被呪者など、
主に呪いを患った患者を療養している

呪いを扱うだけに、人も建物も管理は徹底されていて、
施設内は綺麗で、病室も広い。




受付に身分証を見せて、持ち物検査を受け、
許可が下りるのを待合室でじっと待つ。

何度来ても、何度見ても、覚めない夢を見ているよう。
そのたびに、無力な自分に辟易し、
綺麗過ぎる眠ったままの少女を窓越しに想う。







『やっと謹慎明けたよ、津美紀。ごめんね、全然来られなくて。』


「…。」







『……こんな所じゃ、聞こえないね…。』






意識がないのだから、どこから声をかけても同じ。
例え耳元で語りかけても、返事は帰ってこない。

それでもこの薄いガラス1枚の壁がもどかしい。
たった数ｍ先でベッドに横たわる
何よりも大切なあの子に触れることすらできない。





特級呪術師なんて何の価値もない。
結局、たった一人の大事な人さえ守れない。

生みの親も、育ての親も、
図々しく親の真似事をしたこの子も、




私のせいで大事なものを失わせて、

何も出来ない自分に、
ただ傍に居ないことだけが
唯一の償いなんだと言い聞かせる。









これ以上、あの子に不幸が降りかからないように。

甘い匂いに乗せて、あの子に呪いを運んでしまわないように。








この壁が、私から津美紀を守ってくれる。









『ごめんね…、津美紀。…こんな所に一人で、寂しいよね。…学校行って、友達と遊んで、好きな人と笑い合ったり、手を繋いだり、したかったよね。』





いつも誰かの幸せを願って、笑っていた。

優しいこの子には、たくさんの人に愛される未来があった。









「…」









自分の力に驕って
誰かを幸せにできたつもりでいた。




でも結局は

津美紀から幸せな未来を奪って、
恵からは唯一の家族を奪っただけ。









『……なんで、いつも私じゃないの。力も、未来も、命も、…好きなだけ奪えばいいのに、』








大切な人の、大切なものを、
何度も奪い、不幸にしてきた。

そんな私に、
誰かに幸せを与えられる資格なんてあるわけがない。

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