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「……― と、いう訳でして…」
「……。」
「ご…五条さん…?」
香月さんを病院まで送り届け、そのまま空港へ向かい、
今度は五条さんを拾う。
車のドアを開けた瞬間、
サングラスで隠れた瞳は大きく見開いて
物凄い冷めた目で僕を睨む五条さんに慌てて事情を説明した。
しかし返事はなく、
腕と足を組んで携帯を弄りだしたので
重い空気のまま車を発進させる。
念のため僕のバウムクーヘンは上着で包んで隠しておいた。
「あ…、あと、伝言を一つ頼まれてるんですけど…」
「言って。」
「香月さんも帰れないことは不本意そうでした…」
「いいから言えよ。早く。」
最大限にフォローしたつもりが
逆にイラつかせてしまったようで、
もう怖すぎて後ろの様子は確認できない…
「…”必ず、帰るから”…と。」
「………。」
「……五条、さん?」
やはり何も言わない五条さん。
恐る恐るバックミラーで様子を伺うと、
眉間に皺を寄せて不服そうに目を細める
あまり見たことがない表情が見える。
しばらくすると盛大に溜息を吐いて
背凭れに体重をかけて沈み込んだ。
「……伊地知。」
「……ハイ。」
「助手席の、返して。とぼけたら蹴り飛ばすよ。」
「……ハイ。」
さようなら、僕のバウムクーヘン。
せめて姿だけでも見たかった。
「…こんなお菓子で僕の機嫌が直るとでも思ってんの?てか恵にはちゃんと電話するのに僕はメールすら無視とか考えらんない。それに何で伊地知に伝言頼むワケ?僕に直接電話したらいいじゃん。」
「……。」
ブツブツと文句を言いながら早速一つを手に取って
雑に包装紙を破いて開ける五条さん。
中に入っていたお菓子を頬張って
他のお土産の中身も確認している。
お菓子と伝言一つで五条さんの機嫌を直すなんて、
さすが特級呪術師だ、香月さん。
おかげで運転がずっとしやすくなった。
「ねえ伊地知。今度僕のに手を出したら往復ビンタだよ。」
「………すみませんでした。」
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妃 - すごく素敵な作品でした!個人的にその後の恵を見たいです。続編も楽しく読みます。 (2020年11月27日 20時) (レス) id: edafa70660 (このIDを非表示/違反報告)
mimi(プロフ) - 初めまして。昨日の夜からこのシリーズ全て読ませて頂きました、振り回される五条凄く好きです、主人公も好きです…!こちらは完結でしょうか?もし続きあれば楽しみにしています! (2020年11月17日 11時) (レス) id: 4447061f23 (このIDを非表示/違反報告)
もっち(プロフ) - とっても面白く、素敵な小説で何回も読み返しています(><)!!アンケートの件ですが「チューベローズの初恋 続」後の9年間のお話を希望します...!!! (2020年10月18日 1時) (レス) id: ff2316c362 (このIDを非表示/違反報告)
SS(プロフ) - 9年後のお話希望です!新しい方のお話とも悩んだのですが、まだチューベローズの五条悟が読みたいです、、! (2020年10月17日 20時) (レス) id: 9f946892a2 (このIDを非表示/違反報告)
ゆで卵(プロフ) - 度々コメント失礼します!チューベローズの初恋 短編集を読んでみたいです…!!!元許嫁のお話もとても面白そうで悩んでしまいましたが、チューベローズの初恋をもっと読みたいなと思いました。新しい作品も応援してます!! (2020年10月17日 0時) (レス) id: 18a070aa90 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:縞 | 作成日時:2020年5月23日 12時