俺がやる【ソラ】(リクエスト) ページ44
「……ね、ねぇ、ソラ?何これ……何の冗談なの?」
「冗談でも何でも無いよ」
俺は安心させる為に、引き攣った表情を見せるその子に微笑んだ。
「そうそう、痛くないか?
無理矢理縛っちゃったけど……」
俺はAの背後に回り込んでは、後ろ手に縛った腕を触れて確認する。
すると、何に怯えているのか、大きく肩をビクつかせながらも、Aは叫ぶ様に言った。
「別に痛くないけど! 痛くないけど何で私の腕を縛るの!?
これじゃあキーブレードも使えないよ!」
解いて解いてと、Aは癇癪を起こし始める。
終いには嗚咽を漏らし始めたその子に「先が思いやられるな」と、俺は少し戸惑った。
「Aはもう戦わなくたっていいんだって」
とりあえず、納得して貰うという意味合いを込めてAに告げる。
けれど、逆効果だったみたいだ。
潤んだ目を丸くしたその子は、次第に悲哀に満ちた面持ちへと変化していく。何かしら勘違いをしている様子だった。
「……私じゃ役に立たないから……?」
「あー、もう! 違うんだって!」
口を開いたと思えば、聞いたことも無い程のネガティブな発言をするA。
俺、何か間違った事したのかな?
俺は、俺は、ただ君のことを……
「……俺は! Aを守りたいだけだっ!
ほら、Aっていつも怪我するだろ?
だったら、俺がAの代わりに全部やればAは怪我しなくて済む!」
いつのまにか自棄になっていた様で、気付けばそんな事を大声で言い返していた。
こうなったらもう止められない。
へ? と、腑抜けた声を洩らすその子を、グイッと間近に引き寄せる。
そして、俺は思い切って唇を合わした。
「な、なな……何なの、本当に……!」
口を離すと、ただひたすらに混迷に陥っていたAは、一転して頰を紅潮させる。
「そろそろわかって欲しいんだけどな」
つまりは、Aにはもう手は要らない。
でも、切り落としたら、結局Aを傷付ける事になっちゃうし……
「だから、A」
俺がAの望む事を叶えてあげるから。
俺がAの分まで頑張るから。
「俺の言う通りにしてくれ」
そう言って、その震え始めた身体をぎゅっと強く抱きしめた。
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます!とても面白かったです!ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです!完走おめでとうございます! (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:フェトルクス | 作成日時:2019年1月25日 0時