愛情、怨恨【ヴェントゥス】(リクエスト) ページ5
『ヴェン、今日も修行頑張ろうね』
『うん！ 俺、いつかAより強くなって
Aを守るんだ』
『私より強くなるの？
……なら、それまで待っているよ』
胸を張って言った言葉。それに優しく笑ってそう返したその子に、ドキリと心が跳ねる様な思いをしていたあの頃。
それは修行を始めてから間もない時だった。
「……何でだろう」
あの子を見て。あの子と笑い合って。
……あの頃はそれだけでも十分だった筈なのに、今になるとやけに変な気持ちが残る。
心がどんどん重く沈んでいく嫌な感じ。
何となくだけど、それは分かってはいけないものの様な気がした。
「あのね、ヴェン」
「どうしたんだ？ A」
ある日の事だ。
俺の隣に座っていた、いつもより幸せそうな表情をしているAが少し照れた様子で言った。
……嫌な、予感がしたんだ。
「私、テラと付き合う事になったんだー」
その子の言葉に途端、俺の時間がそこで止まった。
「……Aとテラが？」
うん、と頬を赤く染めて笑ったその子とは裏腹に、俺は全身が急激に冷めていく感覚を憶える。
Aが。AがAがAが取られる。
テラに取られちゃう。
何で？Aを守るのは俺って言ったのに。
待ってるってあの時言ってくれたのに。
確かに、思い返せばAのテラへの態度は俺に対しての時とはいつも違っていた。
俺には、弟と思っている様な眼差しを。
テラには、何だか愛しい人を見る目で……よく考えれば差は歴然とあった。
……好きなのに。
俺は、Aの事が好きだったのに。
___裏切られた。
そう思えた瞬間、心の中に芽生えたもの。
それは、俺には無かったもので。
「……ヴェン？」
「……許さない」
無意識に口から紡ぎ出た言葉。
その時___気付いたら俺はキーブレードを持っていて。気付いたらそれはあの子の腹に深く刺さっていた。
キーブレードを抜くと、その子はよろめき倒れそうになったので、咄嗟に俺はその子を支える。
少し、泣きそうな。そんな表情でその子は途切れ途切れに声を出す。
「……な、んで……？」
「おやすみ、A。
安心してよ……Aが次に起きた時は全部終わってるから」
光の粒が散り散りと出ているその子を抱き締め、もう言葉なんて届かないだろうけど俺はそう言った。
そして、その子が消えた後に残ったのは、まだ消えることのない静かな怒りと、微かに感じたあの子の温もりだった。
……全て終わらすよ。
全てを手に入れるまで【ルクソード】（リクエスト）→←君を守る為に【ロクサス】(リクエスト 甘)
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 121人がお気に入り
お気に入り作者に追加
この作品を見ている人にオススメ
この作品を見ている人にオススメ
「短編集」関連の作品
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告感想を書こう！(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (
レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても面白かったです！ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです！完走おめでとうございます！ (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：フェトルクス | 作成日時：2019年1月25日 0時
