井の中のあの子【ゼムナス】(リクエスト) ページ25
この城には一つ、誰にも知り得ない部屋がある。
ある条件を満たさない限り現れる事のない隠された扉。ある意味、忘却の城の未だ見ぬ目覚めの部屋の様なものだろう。
私は、通常より複雑な構造を施したその扉の前に立つと、それを解いて開く
すると、その扉の先にいたその子は物音に反応して、こちらに振り返った
「……！ ゼムナス、おかえりなさい」
「ああ……良い子にしていたか？」
駆け寄ろうにも、足枷でこちらにまで届かない幼気で愛らしいその少女。
その子の代わりに私がそこまで歩いていく。
漸く届く位置に到達すると、抱きついてきた。
その子を受け止め、私はその頭を撫でる
「わたしはちゃんとここにいたぞ」
「そうか。しっかりと守っている様だな」
胸を張って、という態度のその子に褒美として、至る所にキスを残す。
むず痒い感覚がしたのか、その子はふにゃりと笑って私の胸に頭を擦り付けた
このAという少女は言うなれば無知。
記憶を失いここに来てからは、私とこの部屋だけが全ての世界だと信じて疑わない、か弱き一人の少女だった
……まあ、正確には私がそう思い込ませたのだがな
「……また、ゼムナスはどこかに行くのか？」
すると、Aは私の口調に似せた様な言葉を使いながらも、小さい声でふと、呟いた。
私は地面に散らばった絵を垣間見るも、直ぐにその子へと視線を戻し、その子を包み込むように抱きしめる。
「……すまないな。A」
ここには退屈しない様にある程度の物は揃え、私も時間が開くときは必ずこの子に会いに行く。
しかしながら、それでも孤独の穴を埋められないとなると私はそう返すしかなかったのだ。
……前に一度、機関に入れさせようとも考えたが、それはAに要らない知識を身に付ける事が明白で。
私以外の色に染まるのはどうしても許せなかった。
「気になってた……ゼムナスは一体どこに行ってるんだ？」
我慢できなくなったのだろう。遂に不安が表に出るようになったその子は、あえて触れなかったであろうその質問を私に投げかける。
Aは更に続けた。
「もしかして、その扉の先には違うものがあるのか？ わたしが見た事のないような……」
「そんなものは無い」
その子の言葉を遮る様にして、私はそれを否定する。
……お前は、私だけを知っていれば良いのだ。
他への興味関心は一切必要無い。
明言した私に大人しく口を噤んだA。
それで良い。お前は私のものなのだからな。
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レフト(プロフ) - ご満足頂けたようで何よりです。ソラさんもわざわざこのような小説にリクエストして下さり、誠に有難うございました。 (2019年5月27日 22時) (
レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ソラ(プロフ) - 完結おめでとうございます！とても面白かったです！ありがとうございました (2019年5月27日 5時) (レス) id: 788aead105 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - ムスメ3さん» 今までのご閲覧、誠に有難うございます。ムスメ3さんから頂いた沢山のリクエストは非常に捗りました。 (2019年5月27日 1時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
ムスメ3(プロフ) - すごい面白かったです！完走おめでとうございます！ (2019年5月26日 19時) (レス) id: a84e4bce58 (このIDを非表示/違反報告)
レフト(プロフ) - いちごみるくさん» 四ヶ月という時間を掛けて漸く完結致しましたが、初期の方から見て下さったいちごみるくさんには感謝しきれません。今までご閲覧頂き、本当に有難うございました。 (2019年5月26日 13時) (レス) id: 472b62e3a2 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：フェトルクス | 作成日時：2019年1月25日 0時
