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ドアを開けたら、
びしょ濡れのクォンさんが壁にもたれて立っていた。
嵐が来てしまった。
自分が呼んだんだけど。
ゆらゆらと、持っていた瓶を私の目の前で降って
｢ワイン、飲める？｣
“どうぞ。”
質問に答えず、
濡れてるからって世話も焼かない。
それくらいで風邪ひかないでしょ。
“座ってください。”
『いや、俺濡れてる…んですけど？』
“大丈夫。
その椅子は、すぐ乾きます。”
ふっと笑って彼が座った。
“私、全然クォンさんから離れられるし、
彼女になる気もないです。”
『敵意むき出しだね。』
身なりを整えつつ、おかしそうに笑う彼。
今度は濡れた長めの前髪の向こうで、ニヤッと笑って
『逆に、開き直って攻めれる感じ？』
……色気が…すごすぎる！！
でも！負けられない！
“馬鹿なんですか？
実は暇なの？
悪いけど、私は忙しくて、常に寝不足。
今も早く寝たいってことばっかり考えてます。
毎日髪も洗えないし、さっきやっと洗えたの。
例えばこんな嵐の日でも呼び出しがあれば、すぐに病院に行くし、クォンさんが入る隙は、私の人生にはありません。
もう本当に迷惑なの！”
あースッキリ。こんなに自分の思ってること言えたの久しぶり。
どんな女の子でもドキドキさせられちゃうような色気の塊な人の前で、
髪洗ってない自慢しちゃったけど。
『敬語とタメ口が混ざってるのは、混乱してるから？
せんせーのプライベートとか考えとか、大事にしたいと思ってるし、尊重はするけど、俺は引かないよ。』
飄々と、あたしの部屋を見渡しながら言う彼。
しぶといな…。
あの時、無視したらよかったかな。
そろそろ脳みそが限界。
頭が回らない。
眠い…
ずぶ濡れでも、
クォンさんはカッコいい。
でもあたしは…
“あたし、2.3日髪洗わない事もあります。
突然何時間も手術室に缶詰めになるし、
オペ着が普段着で、女子力ひっくいってゆーか、ゼロです。
だから”
『好きだよ。
Aちゃんが、好きだよ。
理由は
ない。』
あたしを真っ直ぐに見つめながら言われた言葉なのに、
自分が言われてる実感がない。
そう、か。
クォンさん、本当にあたしのこと、好きでいてくれたんだね。
あたしは…
気づいた時は、またクォンさんの腕の中
最後まで言わせてもらえなかった台詞、言わなくてよかったかも…。
クォンさんの体温が、落ち着く。
それに究極に眠い。
“もう、意識が…”
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作者名：feliz | 作成日時：2018年8月31日 22時
