love me not. (ページ15)

今日:3 hit、昨日:6 hit、合計:69,237 hit

white 15 ページ15

屋上から見る高い空は黒い雲だらけ。

台風来るって言ってたな…風が強い。

帰るのも面倒で、そのままﾀﾞﾗﾀﾞﾗしてたら、

「A！まだいたのか。
早く帰れ！そんなにここがいいなら家賃の無駄だ。
部屋を解約しろ！｣

“わかってます！帰るから大声やめて下さい…
頭に響く…。”

今日も先輩はものすごい元気。
先輩の笑顔は、私を毎日に戻してくれる。

彼と最後に会ったあの日から2週間。
あの日はあのまま、
クォンさんから逃げるように医局に戻った。

地上に降りる長いエレベーターの中で思い出すのは

『好きになるのに、理路整然とした理由が必要なわけ？』

もう何度も頭の中で繰り返した彼の言葉。

エントランスを出たらすごい風。

人はみんな、風に押されながら小走りで私の視界からいなくなっていく。

葉っぱも街のゴミも風に乗って舞っていく。

その向こうに…動かない、
白い車に寄りかかっているサングラスの男。

彼だけが、ゆっくりとした動作でこちらに歩いてくる。

鼓動が痛い。

台風が近い。
早く行かないと。嵐が来る。

クォンジヨンがこっちに歩いてくる。

彼に気づかないふりをして、
風に押されるふりをして
早足で歩きだしたあたしの腕が掴まれた。

熱い、
細くて意志のある手。

あたしを抱き締めた腕の感触が蘇る。

振り返ると、甘い香りが強い風に乗って私にまとわりついた。

『せんせー、俺の彼女になって？』

サングラスで表情はわからない。

“無理。”

『なんで？
俺達もう、どうせ離れられない。』

その時、
強い風で彼の帽子が飛んだ。

私の視界に現れた鮮やかなピンクの髪。

何この色。
ヤバい。

“バレる。”

『で、お相手はお医者さんだって面白い記事が出る。
いつもと同じ。

せんせーには迷惑かけちゃうけど。』

“車止めてきて。
私の家の住所ショートメールする。
でかいエンジン載せた車じゃなくて、地味に来て。”

さらりと
クォンさんから離れて歩き出す。

あたしが記事になるなんてまっぴら。
この話に、早くケリをつけないと。

彼を隠しながら話せるのは自分の家しかない。

バレるって言った時、
笑ってたけど、悲しそうにもみえた。

彼も
何かを諦めたり、でも探したり、
時には戦って、傷ついて、
そうやって生きてきたのかな。

彼が本当にあたしの家に来るのかな。