本当の名前は【第５人格】 (ページ9)

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第８幕ページ9

占い師と別れた後、脚本家は迷走していた。

探索中は道順を覚える気など起きず、おまけに長い廊下は風景が微塵たりとも変わらない

『地図でもあれば良いんですがねぇ…今までに来た方々は迷わなかったのでしょうか？』

諦めた脚本家。絨毯に腰を下ろした

慣れない環境の影響か、普段以上に体が重い。おまけに空腹なので、ここから立ち上がる体力は無いに等しい。今になって無性に腹立たしくなってきた。

「溜息をつくと幸せが逃げる」と聞いたことがあるが、それが事実であれば、不幸体質になるのも時間の問題だ。

荘園内にどう言った部屋があるのかは今朝の探索で把握したが、それらの位置関係が分からないので、結局は迷子である。

良い歳した大人が館の中で迷うなんて、良い笑い話だろう

ポケットから掌サイズの手帳を取り出し、知り得た情報を箇条書きに書いていく。
ここへ来たのはインスピレーションを受ける為なので、その為にも情報は重要なのだ。

そうして書き続けること(体感)５０分……

目の前の部屋の扉が控えめに開き、直後にドサッと物が落ちる音が聞こえた。何事かと視線を顔を上げると

少女が１人立っていた。持っていたであろう紙の束が辺りに散乱し、当の本人は口をあんぐりと開けて固まっている。散らばる紙には、何やら複雑な設計図が書かれており、同じようなものが全ての紙に書かれている。

『…大丈夫ですか？書類が散乱していますよ？………あの、書類が…』

「……………………………」

顔の前で手を振ったり、体を揺さぶったりしてみるものの、反応はない。

『放っておきますか。その内起きるでしょうし』

飽き性な脚本家に根気強くと言う信条は中々に理解しかねる
執筆と言う趣味を除き、大概の事は長続きしないのだ。例えそれが人命に関わろうとも

興味がないものであれば尚の事

『…あぁ、食堂は自室を左に進むとあるんでした』

・

「リジーさん、どこにいるのかしら…？」

「確かに庭園で別れましかが……彼女は随分と方向感覚に疎いようですね」

食堂で２人、脚本家は方向音痴なのでは…？？と顔を見合わせる医師と占い師であった