第５幕 ページ6
「この方はフランスが生んだ天才小説家、グレイス・ローゼンタール様。リジー様よ！」
「こいつは軍の准士官だ。あの時俺を助けてくれた奴と声が同じだからな」
「どういう事なの？」
歓迎会は一変し、そこらかしこで言い合いが始まった。彼女は何だ。彼女はこうだと
収拾がつかなくなり、１人の女性が脚本家に問い掛けた。
「あぁ言われているけれど、実際本当なのかしら？えぇっと…」
『リジーとでもお呼び下さい』
「そう、ではリジーさん。貴女の職業は誰の言い分が正しいのかしら」
脚本家は暫く考える素振りを見せると、どこか面倒臭いと言った表情で口を開いた。
『あの人達が言っている人物は全て私自身です。会った時点での職業と名前を述べたので』
「何と呼べば良いのかしら」
『
脚本家、グレイス・ローゼンタールと申します。同名の方がいらっしゃるようなので、ローゼ、またはリジーとお呼び下さい』
歓迎会の類は苦手なのでお暇しますね、と踵を返して出て行ってしまう。
「また特殊な人が来たわね……ﾊｧ、どうなる事でしょうね。全く」
額に手を当てて項垂れる姿は、まさしく苦労人と言った風体だった。医者である彼女が倒れてしまえば、この荘園は魔境と化してしまうというのに。(巷の噂はあながち間違いではない)
「ねぇ、エミリー。１つ気になった事があるなの」
「どうしたの？エマ」
口調こそ変わらないが、庭師の表情はまるで怪奇現象を目の当たりにしたような、奇妙なものをみるような顔つきだった。
そして脚本家が出て行った扉を指差し、今にも泣きそうな程に、か細い声でこう言ったのだ
「どうしてリジーさんが、グレイスさんの事を知ってるの？」
・
薄暗い廊下を歩く脚本家。ふと後ろを振り向くと、小さな声で呟いた。
『リディア、貴女が生きていたことは驚きましたよ』
冷えた声音とは裏腹に、その表情はまるで玩具を見つけた子供のように無邪気で、、
まさに歪だった
この小説をお気に入り追加 (しおり)
登録すれば後で更新された順に見れます 9人がお気に入り
違反報告 - ルール違反の作品はココから報告
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名：夜玄 | 作成日時：2021年6月19日 21時
