本当の名前は【第５人格】 (ページ30)

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第２６幕ページ30

ガチャリ、、

待機部屋の扉が開くと同時に、周囲の温度が数度下がったかのような冷たい空気が部屋に満ちる

『……………居ませんネェ…、、外れたようデ』

既に揃っていた３人を一瞥すると、小さな溜息をついた

脚本家が動くたびに、辺りには香の香りがやんわりと広がる。今回の構成は大体が物静かな性格の人しかいないので、何を言っても返答はおろか、息遣い１つ聞こえない

全員が限定衣装を纏う空間には、最上の沈黙が鎮座していた

[試合を開始致します]

視界が暗転した

今日岐路を憐れむ帰り来たけれど衣払わず

『……随分と懐かしい場所ですネ、、、この体の持ち主にとっては、ですガ』

目の前にそびえる大きな木。結び付けられた無数の提灯

石造りの建物が並ぶ東洋の町並み

[解読に集中して！！]

[地下室はこっち！！]

通信機への通知に慌てて解読機を探す。屋内に足を踏み入れると、解読機の隣に赤黒い棺が立てられている。

興味深そうにしばらく観察した後、便条本(メモ帳)を開く。

『追われているのは…調香師、、、あァ、クロエ(ウィラ)サンですカ』

言うのも何だが、脚本家は試合で一度たりとも自らの意思で外在特質を使ったことはない

干渉不可や操作遅延は制御のしようが無いので使わざるを得ないが、転移や修復に関しての能力は一度も無い

ダウンを知らせる鐘がマップに響く。解読機を上げ終えた脚本家は街をフラフラと探索していた。

光源不明のほのかな光が金糸の装飾に反射する。気怠げに吹いた紫煙が空を昇る

中国の貿易商である(今の衣装の)彼女には見覚えのある店がいくつかあった。

『懐かしいですネェ』

なんて言う彼女が、自分以外の脱落に気付くのは数分後
・

【明天(メンテン)】

素性の知れない貿易商が１人、その店を切り盛りしている。
常に胡散臭いーーー読めぬ笑みを浮かべる店主は実に温和で、大抵の物であれば簡単に手に入る

日常品や高価な装飾品、はたまた異国の素材まで

皇帝までもがその店を気に入り、客足が耐えぬ人気の店となった

ある日の事、戦で名を馳せる有名な将軍がやって来て、その店主に頼んだそう

「かの秦王朝の時に仙人から賜ったとされる宝剣、赤霄剣(せきしょうけん)を頂きたい」

ホラ話だと人々が笑う中、店主はかの宝剣を持ってきた

『お代は高く付きますヨ？』

ニンマリと笑いながら