第２０幕 ページ23
「…………さて、中々理解に困る状況だな…」
実験が一段落ついたので、空になった珈琲を淹れてくるか…と椅子から立ち上がった。
部屋中に実験機器や書類が散乱しているが、気に留めたことはない。整頓したからと言って望む結果は出ないうえ、整頓された空間を望んではいない
が、
これは明らかに書類でも、ましてや実験用の機械でもない。
人である
ベッドに倒れ込んで眠る誰かが、部屋の主たる囚人の視界に写り込んだ
「人を招いた記憶は無い……私が実験に没頭している間に間違えて入って来たのか…？」
壁に掛けられた時計を見れば、時刻は１１時を過ぎていた。無論午前の
「厄介なご客人が来たものだ」
囚人は音を立てないよう扉を開けると、静かに部屋から出て行った
・
「ーーーーでは昼食後に庭園で」
『……お昼…ごはん、、、、、お昼？』
囚人が部屋を出て行った直後、脚本家は目を覚ました。自分の部屋はこんなに散らかっていただろうか、と言う疑問が浮かんだが、特に気にする事もなくベッドからおりて、部屋を出て行った。
『もうお昼だ……大変…』
「リジーさん居ないじゃない！！」
「さっきまでは確かに居たんだけどな〜……」
「やっぱり幽霊なのかなぁ？」
「おや、奇術師のようだね。煙のようにとはまさにこの事だ」
色々な誤解が荘園内に生まれていた。当の本人は知る由もなく
「……えらいご機嫌どすなぁ、ジョゼフはん」
所変わって庭園。上機嫌に写真機を手入れする写真家にどこか不機嫌そうにものを言う芸者。不機嫌なのを分かっているのかは分からないが、写真家は皮肉げに言葉を返す
「そう言う貴女はご機嫌斜めですね。何か癪に障る事でもありましたか？」
「分かっとって言うてます？」
「さぁ……何のことでしょう」
「食えへん人どすなぁ」
「褒め言葉として受け取りますよ」
不穏な空気が漂うなか、その空気を壊すように第三者の声が割って入る
『もしかしてお邪魔でしたか？』
「そんなんどすか……えらいご執心な事で」
一変して顔に微笑みを浮かべた芸者は、脚本家の頭をフワリと撫でて何処かに行ってしまった
「君が来るまでの間話していただけさ。随分慌てて来たようだね」
『……！！どうしてそう思ったんですか？』
「髪が乱れているよ」
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作者名：夜玄 | 作成日時：2021年6月19日 21時
