第１幕 ページ2
決意を決めた１週間後。彼女は森の中にいた
『随分あやふやな地図……』
濃い霧が辺りを覆い、鼻の先すらも見えない程に真っ白な視界。
まるで人がここを歩くことを想定しているように真っ直ぐと続く白い石畳。
正確に示していたのは森の位置で、館の座標は不確定。思わず顔を顰めたくなる。
『エウリュディケ……どこにあるのやら』
そう呟くと、視界を白く覆っていた濃霧が突如として晴れた。
目の前には荘厳で、どこか浮世離れした不気味さをもつ大きな洋館が建っていた。
自身の倍以上はあろう鉄製の門扉は、客人を歓迎するように独りでに開いた。
『良い題材になるかも』
小さく微笑んだ後、彼女は足を踏み入れた
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【デリカロス劇場】 未解決事件の調査報告書
フランス南東部の都市・リヨン １７８３年某日
公演後に観客や役者を含む役４００名が謎の死を遂げる
死因は未だに不明
最も有力視されているのは、彼女(脚本家と表記する)への私怨による貴族達の工作
遺体の損傷が激しく、身元特定が可能な者はおよそ７名。
現場に脚本家の遺体は無く、重要参考人として手配中
《追記》
後日、周辺住人への聞き込みの結果、脚本家のアリバイが証明され、行方不明として処理
捜索を続けている
脚本家の私怨での犯行と仮定し調査した結果、容疑者として候補に挙がったのは２人
１人目はノラン・ド・ミシェル伯爵
前々から脚本家に好意を抱いており、何度か婚姻を持ちかけていた(情報屋談)
劇場内で殺人未遂を犯し、それ以降の動向は不明。動機は脚本家関連だと言われている
２人目は(破られており読解不可能。人為的なものと思われる)
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作者名：夜玄 | 作成日時：2021年6月19日 21時
