六月を始める ページ3
ふと、翼が羽ばたく音が聞こえて、視線を上げた。
クルルッ、ポー、クルルルッ、ポッポー。
日常的によく耳にする、鳩の鳴き声をあげて、此方をつぶらな瞳で見つめている。
そして、そのまま小さな嘴を開いた。
今からちょうど百二十時間後、あなたの住む世界は消失します。詳細を語ることはできません。
その間何をしてどう生きるか、死ぬか、すべてはあなたに委ねられています。
また、この手紙は限られた一部の人々にのみ送られています。
よい終末をお過ごしください。
草々 不一
寝惚けているのか、霧が掛かったように晴れない頭の中が、冬の朝のように冷めきる。
え、と声を上げる暇もなく、鳩は開け放たれていた窓から曇り空へと飛び出して行った。
こんな手紙なんて、薄気味悪い。
もう見えなくなった鳩が飛んで行った空の彼方を見つめながら、憂いを帯びたため息を吐いた。
「絵梨ー、降りて来なさい、朝ご飯出来てるから。」
部屋の外から聞こえたお母さんの声に返事をして、ドアを開ける。
もう一度だけ、窓を振り返れば、青色のカーテンがゆらゆら、と揺れていた。
2人がお気に入り
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:青碧 | 作成日時:2020年9月11日 0時