第60話 『The Gleameyes』 ページ18
見上げるようなその体軀は、全身縄のごとく盛り上がった筋肉に包まれている。肌は周囲の炎に負けぬ深い青、分厚い胸板の上に乗った頭は、人間ではなく山羊のそれだった。
頭の両側からは、ねじれた太い角が後方にそそり立つ。眼は、これも青白く燃えているかのような輝きを放っているが、その視線は明らかにこちらにひたと据えられているのが解る。下半身は濃紺の長い毛に包まれ、炎に隠れてよく見えないがそれも人ではなく動物のもののようだ。簡単に言えばいわゆる悪魔の姿そのものである。
入り口から、奴のいる部屋の中央まではかなりの距離があった。にもかかわらず俺たちは、すくんだように動けなかった。今までそれこそ無数のモンスターと戦ってきたが、悪魔型というのは初めてだ。色々なRPGでお馴染みと言ってよいその姿だが、こうやって《直》に対面すると、体の内側から湧き上がる原始的な恐怖心を抑えることができない。
おそるおそる視線を凝らし、出てきたカーソルの文字を読む。《The Gleameyes》、間違いなくこの層のボスモンスターだ。名前に定冠詞がつくのはその証である。グリームアイズ__輝く目、か。
そこまで読み取った時、突然青い悪魔が長く伸びた鼻面を振り上げ、轟くような雄叫びを上げた。炎の行列が激しく揺らぎ、びりびりと振動が床を伝わってくる。口と鼻から青白く燃える呼気を噴出しながら、右手に持った巨大な剣をかざして__と思う間も無く、青い悪魔はまっすぐこちらに向かって、地響きを立てつつ猛烈なスピードで走り寄ってきた。
キリト「うわあああああ!」
『きゃあああああ!』
俺たちは同時に悲鳴を上げ、くるりと向き直ると全力でダッシュした。すくみながらも(人1)の手を握っていたようで、彼女を引き摺るようにして走った。ボスモンスターは部屋から出ない、という原則を頭では判っていても、とても踏みとどまれるものではない。鍛え上げた敏捷度パラメータに物を言わせ、俺と(人1)は長い回廊を疾風のごとく駆け抜け、遁走した。
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作者名:レイ | 作成日時:2016年8月29日 16時