二十一話 『肩』 ページ21
泣きじゃくるお母さんをなんとかのぼせないうちにあがらせて、お父さんのいる書斎に連れて行き、自分の部屋に戻った。お父さんとお母さんは湯浴みの余韻を覚ましてから眠ると言っていたのでもうそろそろ床についている頃だろう。
部屋に戻ってすぐ、お母さんに貸してもらった浴衣を上半身だけはだけさせ、私も湯浴みの余韻を冷ましながら兄とおそろいの銀髪を乾かしていた。左肩から胸元へと流れさせれば、背中が夜独特の少し冷えた空気に触れ、体に残る熱を冷ましていく。
ふわふわと妙に肌触りのいい布__タオルというらしい__の感触を味わっていると、不意に先程お母さんに話したことを思い出し、チリチリとした痛みが背に残る醜い傷痕を這った。
『・・・・・・なんで、話したんだろ・・・・・・』
無意識に呟いた。お母さんやお父さん、新一くんの、あのどこまでも真っ直ぐな瞳。あの瞳に、知らず知らず感化されていたのだろうか。あんな瞳は私がもといた世界ではめったにお目にかかれなかった。少なくとも私の双子の兄や昔ながらの仲間、天パーで船好きの友はあの人たち以上に真っ直ぐで綺麗な瞳だった。・・・・・・似ていた、のだろうか。兄たちの瞳に。あの人たちの瞳が。
『・・・・・・どうしようもないくらい未練たらたらだなあ、私』
これでは、この世界を愛するのにいったい何年かかるのやら。思わずため息を吐く。
すると。
新一「・・・・・・A・・・・・・お、起きてるか・・・・・・?」
私の部屋の扉を叩き、遠慮がちに声をかけてきたのは今日、私の《兄さん》になった人。
『起きてる、けど。少し待って』
軽く返事をしてから、はだけさせていた浴衣をさっと羽織りなおし、部屋の扉を開ける。
新一「わ、悪いな。こんな時間に・・・・・・」
『大丈夫、まだ寝るつもりじゃなかったから。それより、どうしたの? 何か話?』
問うと、新一くん__兄さんは、あからさまにおどおどし始めた。落とした視線を時折私の肩辺りに送り、口はもごもごと何かを言おうとしているようだがそれが全く判らない。
・・・・・・ん? 肩?
そこでようやく目の前の気まずそうな仕草を繰り返している兄の言いたいこと__或いは聞きたいこと__が判った。
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凛 - 面白かったです!ゆっくりでもいいので更新待ってます (2022年12月5日 18時) (レス) @page33 id: 0db889cc25 (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - かっちゃんさん» コメントありがとうございます。この作品を読んでいただき誠にありがとうございます。これからもご愛読頂けますよう努力致します。 (2020年5月5日 16時) (レス) id: 59a8307c61 (このIDを非表示/違反報告)
かっちゃん(プロフ) - この小説が好きすぎて何十回と読んでます!!! (2020年5月5日 1時) (レス) id: df35ba2e7b (このIDを非表示/違反報告)
レイ(プロフ) - もちもちのだいふくさん» コメント並びにご感想誠にありがとうございます。もちもちのだいふくさんの応援は必ず作者の後押しになります。今後ともどうぞご贔屓によろしくお願い致します。 (2020年3月8日 0時) (レス) id: 59a8307c61 (このIDを非表示/違反報告)
もちもちのだいふく - コメント失礼します! この小説すごく面白いし、見やすくてすごいと思いました! 更新頑張ってください(*^^*) (2020年3月5日 21時) (レス) id: 3ed7899564 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:レイ | 作成日時:2015年12月19日 13時