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歌い終わった。
全て、僕の出来るだけの力で。
フッと、僕の目を覆っていたナムジュンさんの手が離れた。
ゆっくりと目を開けた。
「...」
ユンギさんは僕をジッと、しつこいくらい見つめた。
僕は目を逸らしたくなるのを抑えた。
僕の歌声は汚くて耳を塞ぎたくなるって言って欲しかった。
その方が僕の予想に合っていて、褒めてくれるなんて思わないからだ。
「お前...。」
ユンギさんはこれ以上何も言わなかった。
僕は目線をナムジュンさんに移した。
ナムジュンさんは僕をユンギさんと同じような顔で見つめてきた。
少し暗いサッパリとした空気の中で、ただただ静けさだけが響いた。
僕は何を言われても受け入れようと思った。
シーンとした空気をパッキリ割ったのはユンギさんだった。
ユンギさんはヘッドホンを着けてパソコンと向き直った。
そこからはもう必死だった。
目を閉じて、また開いて。
紙にペンを押し付けて腕を前後左右に動かしまくった。
5枚ほど書きまくってバンッとペンを置いた。
そしてまたパソコンと向き直り、今度はマウスを動かしまくった。
僕の喉がごくッと音をたてる。
ユンギさんの必死な姿は音楽家の生き方そのものだった。
普段汗をかかなそうなユンギさんの首元には、薄らと汗が滲んでる。
目を隠す前髪がはだけた時に見えるかっぴらいた目を見て、心臓がキュッと痛くなる。
そして口元が、笑ってる。
まるで、心の底から楽しんでるような顔をしている。
僕はユンギさんの助けになれたと思って嬉しかった。
僕はこの人についていきたい。
音楽というものを教えてほしい。
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作者名：さくらンぼ | 作成日時：2020年3月25日 14時
