遭遇 ページ9
銃兎さんの家を出て数分、ヨコハマも人で賑わっていた。イケブクロとは一味違った良さがあり、新鮮さを感じる。
一郎に居場所を知られたから、てっきりここら辺をうろちょろしているかと思っていたが、あたりを見渡してもそれらしき人物は見つからない。まぁそれも俺にとっては好都合なわけで、イケブクロに帰るべく、ヨコハマ駅へと向かった。
そうして駅前に着いた頃、見覚えのあるベースボールキャップを見つけ、反射的に柱の陰に隠れた。
『なんで二郎がここに…!』
ボソッと、誰に話しかけるでもなく、ただそう呟いた。二郎は誰かと電話をしているらしく、まだ俺の存在には気が付いていない。キョロキョロと辺りを見渡している。
なんとなく会話の内容が気になり、こそこそと二郎の方へ近づいた。二郎から一番近くの柱の陰に隠れ、会話を盗み聞きする。隠れながら聞き耳を立てるこんな姿、傍から見たらただの不審者だ。
「ああ、Aの奴、ここら辺にはいなさそうだよ、兄ちゃん」
俺の名前と、兄ちゃん…つまり一郎。そして、何かを探しているような言動からして、予想はついていたが、俺を探しに来ているらしい。
ここで見つからないようにイケブクロに帰ったところで、何も解決しない。かといって、わざわざ二郎に話しかけに行くのも違う気がする。どうすればいいんだ…?
と、ひとりで悩んでいた俺は、二郎が近づいてきていることなど気が付きもしなかった。
「A!?お前こんなとこで何して…!あ、兄ちゃん、いたよ!」
『こっちの台詞なんだけど。こんなところで何してんの、二郎?』
「テメェを探しに来たんだよ。兄ちゃんがヨコハマにいるっつーからさ」
『その一郎は?わざわざ乱数さんを使ってまで居場所を聞き出した一郎が動かないとか、有り得なくない?』
「兄ちゃんは別の場所を探してるだけだっつーの。いいから、帰るぞ。兄ちゃんも三郎も心配してる。…あと、俺も」
少し照れくさそうに目を逸らす二郎。
本当は二郎や一郎が俺を探してくれていたことが少しだけ嬉しかったりするのだけれど、素直になれない難儀な性格の所為で、俺の口から飛び出したのは、そんな感情とは真逆の言葉だった。
『もう俺に構うなよ』
「あっ、おい、待て!」
きっと、意地になってしまったんだろう。帰ろうと思っていたのに、気づけばシンジュク行きの電車に乗り込んでいた。
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Makua*ぼっち - とても面白いです!更新頑張ってください! (2022年3月8日 17時) (レス) @page9 id: 5e3e454f6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:眠兎 | 作成日時:2022年2月23日 22時