到着 ページ5
あれから数分歩いたところに入間さんの車は停めてあり、今はそれに乗り込み入間さん宅まで向かっているところだ。特に会話はなく、車内はしんとしていた。
窓の外を眺めながら未だに痛む頬を抑えると、若干腫れているような気がした。俺はモデルだというのに、顔を殴ってくるとは一郎も容赦がない。
「A」
『なんスか』
「頬はどうした?」
『よく気付いたね。別に、喧嘩した時に殴られただけ』
「山田一郎にか?」
『うん』
正直、驚いた。夜だから辺りは真っ暗だし、傷になんて気が付かないのが普通だ。けれど、入間さんはそれに気が付いた。気が付いてくれた。その事実が、俺はどうしようもなく嬉しかった。
それから大した会話もなく数十分。イケブクロでは見ることのできない珍しい景色に目を輝かせているうちに、入間さんの家に着いていた。
「A、風呂…の前に、傷の手当だな。こっち来い」
男一人暮らしだとは思えない程入間さんの家は綺麗で、細かいところにも手入れが行き届いていた。こういうのって性格出るよなぁと思いつつ、入間さんに言われた通りついていく。入間さんは救急箱を持ってくると、リビングテーブルに座り、向かいに座るよう促した。
「ちょっとしみる」
『っ…痛…』
「今は消毒だけな。風呂から出たらちゃんとガーゼとか貼ってやるから、先に風呂入ってこい。着替えは適当に用意しておく」
『サンキュ、入間さん』
「銃兎で構いません」
『じゃあ、銃兎さん』
敵チームの、しかも左馬刻さんが一番嫌っている一郎の弟だというのによくしてくれる銃兎さんには感謝しかなかった。
風呂で汗を流すと、銃兎さんが用意してくれた部屋着に着替える。
「…やっぱりぶかいな」
『まぁ、こんくらい気になんないって』
「そうか?ならいいんだが。それより、怪我だ。ガーゼ貼るからじっとしてろ」
どこか手慣れた手つきで俺の頬にガーゼを貼ると、銃兎さんも風呂に行った。自分の家だと思ってくつろいでろって言われたから、ソファに座りながらネットサーフィン。
…にしても、ヨコハマに来た時点で携帯の電源を切っておいて正解だった。一郎たちからの着信やメッセージが尋常じゃない量来ている。はぁーと大きくため息を吐くと、もう何も考えたくなくて瞼を閉じた。疲れていたのか、そこから俺の意識が闇へと落ちていくまでそう大した時間はかからなかった。
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Makua*ぼっち - とても面白いです!更新頑張ってください! (2022年3月8日 17時) (レス) @page9 id: 5e3e454f6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:眠兎 | 作成日時:2022年2月23日 22時