仲直り ページ14
「気づいてやれなくて、悪かった」
耳元ではっきりと言われた謝罪の言葉に、不覚にも目頭が熱くなった。すると扉が開き、きっと壁越しに聞いていたのであろう二郎と三郎が暗い顔で入ってきた。パッと一郎の手が離れる。
「あー、なんだ、その…俺も、悪かったな。寂しい思い、させて…」
「僕も、キツイ態度とってごめん」
『…違う、謝るのは俺の方だ』
「いいや、Aが僕たちを避けるようになったのは、全部僕たちに原因があったんだろ?なら、僕たちが謝るべきだ」
眉をハの字に曲げて苦笑する三郎の姿は、生まれてからずっと一緒にいた片割れの俺ですら滅多に見れるものじゃなく、珍しいものだった。
『違う…全部俺のワガママで…全部俺が悪くて…』
「バーカ、末っ子は兄貴に甘えるもんなんだよ。お前のワガママくらい、いつでもきいてやるっつーの」
「二郎の言う通りだ。寂しい時は寂しいって言えばいい、泣きたい時は泣けばいい、笑いたい時は一緒に笑えばいい。それが兄弟だろ」
「どうせ生涯手を取り合っていかなきゃいけない運命なんだ。僕たちと絶縁するなんて、できるわけないだろ」
白い歯を見せて笑う二郎にくしゃくしゃと頭を撫でられた。その手つきはさながら子犬を撫でるときのようで、耳に熱が集まる。
『…改めて、その…今までごめん。それと…ありがと』
「ああ!」
「ほんっと、三郎に似て素直じゃねーから大変だったぜ」
「なんでそこで僕が出てくるんだよ!」
「ったく、喧嘩すんじゃねーよ、こんな時に…」
勇気出して全部話して、折角いい雰囲気になっていたというのに、三人とも驚くほどいつも通りで、呆れてしまう。
「よし!週末は久しぶりに四人で出かけるか!」
「いいね!じゃあサッカーしに行こうよ!」
「僕はボードゲームがしたいです!」
「ボードゲームなんていつでもできるだろ」
「ハァ?二郎の言うサッカーだっていつでもできるだろ」
「そんなことねーよ!兄ちゃんとだって滅多に遊べねーんだし…」
「それは僕だって同じだ!」
『またかよ…一々喧嘩してんじゃねーよ、おにーちゃん』
「そうだぞ、二人とも。弟に宥められてどうするんだ…」
きっとこれで無事仲直りって事でいいんだろう。この短期間て色々あったけど…全部この時のためのものだと思ったら、そう辛くはなかったかもしれないな。
『じゃあ、間をとってショッピングだな。俺がお前らに、最高に似合う服、選んでやるよ』
そうして、俺たち兄弟にまた平和な日々が戻ってきた。
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Makua*ぼっち - とても面白いです!更新頑張ってください! (2022年3月8日 17時) (レス) @page9 id: 5e3e454f6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:眠兎 | 作成日時:2022年2月23日 22時