本音 ページ13
『何の用だよ』
キッと一郎を睨みつけた。けれど、一郎は怯むことなく、その俺とよく似たオッドアイは俺を射抜いた。
「A、話がしたい」
『お前と話すことなんてない』
「あるだろ。お前は俺達に何か隠してる。違うか?」
『何を根拠に言ってんだよ』
「兄弟なんだから、それくらいわかる」
いつもそうだ。一郎は事あるごとに兄弟兄弟って…けど、それが嫌いだったわけじゃないんだよな…ほんと自分でも面倒くさい奴だって思う。
「お前は俺達の事嫌いなのかもしれないが、俺達は違うんだ。お前の事を心から愛してるし、お前とまた仲良くしたいとも思ってる。…だから、話してくれないか」
『…嫌いになれたら、楽だったのにな』
「え?」
小さくうつむき、ボソッと、雨音くらいの声で呟いた。一郎から聞き返され、首を横に振ると、うつむかせた顔を上げ、真っ直ぐと一郎の瞳を見据えた。
『ずっと…お前ら三人が羨ましかった。
Buster Bros!!!ってチームを作って三人で楽しそうにしてるのが、羨ましかった。
けど、それと同時にお前らがどこか遠い場所に行ってしまったようで寂しかった。
そんな事を想ってしまうくらいお前らの事が大好きだったんだよ。
だからこそ、お前らが離れていくようで、どうしようもないくらい辛くて…気が付けば、憎まれ口ばっか叩くようになってた。
大好きだったお前らに酷いことばっかして、一人の時は後悔しかしてなかった。
そんなとき、夕日って居場所に出会った。
それから段々俺を評価してくれる人が増えて、乱数さんみたいに、俺を俺として見てくれる人ができた。
正直、誰かに認められているのが嬉しかった。
けれど、そんなのじゃ俺の心は満たされない。
俺が満足する時は、必ずどこかにお前たちがいた。
一郎に褒められたとか
二郎と遊んだとか
三郎と勉強したとか
そんなどうでもいいようなことで満足してた。
俺はお前たち兄弟じゃなきゃ…兄貴じゃなきゃ、ダメなんだよ。
どれだけ酷いこと言おうが、俺はずっと──
──お前らの事を、愛してたよ』
俺は三郎みたいに頭がいいわけじゃないから、言いたいことは全然まとまってないし、これで伝わったかどうかなんてわかんない。だけど、今俺が言えることはこれがすべてだ。
辺りがしんと静まり返る。部屋の中の空気は重く、秒針が刻む一秒一秒がとても長く感じられた。そうして、数秒が経った頃。
俺よりも遥かに大きく男性らしい身体が、俺を包み込んだ。
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Makua*ぼっち - とても面白いです!更新頑張ってください! (2022年3月8日 17時) (レス) @page9 id: 5e3e454f6c (このIDを非表示/違反報告)
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作者名:眠兎 | 作成日時:2022年2月23日 22時