夜のハマで ページ5
「もうすぐ仕事が終わるので、三十分後に横浜中華街で待っていていただけますか？」
銃兎から入った一本の連絡。前に会ったときに交わした約束、『今度は外でデートをしよう』という約束を果たそうとしているんだろう。理鶯と会ってからは数日たっていて、そろそろ誰かに会いたいと思っていたから丁度良かった。
OKとスタンプを送ると、クローゼットを開き、どんな服を着て行こうかと何度も試着を重ねる。服装で愛想を尽かされるなんて笑えない。
そうしてやってきた横浜中華街。入口の辺りを見渡すと、仕事終わりであろう銃兎が待っていた。
『お待たせ、銃兎』
「いえ、私も今来たところです。行きましょうか」
『うん。…にしても、今日は寒いね』
「では、手、繋ぎますか？少しは暖まるでしょう？」
『ふふっ、そーする』
ギュッと握った手をそのままポケットに突っ込む。赤いグローブ越しに銃兎の体温が伝わってきて、なんだか安心した。
取り敢えず、お互いまだ何も食べていないという事で適当な飲食店に入り夕食を済ませると、今日はヨコハマをぶらぶらすることにした。
二人で談笑をしながら街中を歩いていると、銃兎が俺じゃない誰かに視線を向けていることに気が付いた。浮気しておいてどの口が言うんだと思われるかもしれないが、銃兎が俺以外の奴を見ているのに嫌悪感を覚えた。
『じゅーと、どこ見てんの？俺はこっちですけどー？』
「おやおや、ヤキモチですか？かわいいですねぇ。…ですが、私は貴方以外の事など眼中にもありませんよ」
にこっと微笑んだ銃兎に負けてしまって、仕方なく許してあげることにした。
銃兎は、俺とデートしてる時、俺以外の奴を見ることなんてほとんどなく、本当に俺以外の奴など眼中にないんだろうということが伝わってくる。けれど、今回は多分目的が違う。俺はただのデートのつもりだったけれど、察するに銃兎は仕事で用があってきているのだろう。…デートの時くらい、仕事の事は忘れてほしいと思うのはきっと俺のわがまま。
『…お仕事熱心なのはいいことだけど、デートの時くらい俺だけに集中してくれてもいいのになー』
「いえ…用はもう済みました。今からは貴方だけを見ることにしますよ、庵」
ちゅっと頬にキスをされ、そのまま向かったのは銃兎宅。そこから何があったのかは、言わなくても分かるでしょ？
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作者名：眠兎 | 作成日時：2022年1月30日 0時
