萬屋ヤマダへ ページ4
イケブクロ・ディビジョンにある萬屋ヤマダまで、以前依頼していた物を受け取りに来た。山田家が所持するビルの階段を登り、コンコンとドアをノックする。中から一郎くんの声がして、ドアを開けた。
「Aさん、こんにちは。どうぞ、座ってください」
『こんにちは。ありがとうね、一郎くん』
「っす」
まだ二郎くんと三郎くんは帰っていないようで、部屋の真ん中辺りにあるソファに腰掛けると、一郎くんはお茶を出してくれて、僕の向かいに座った。適当な雑談を交わし、本題に入る。
「えーっと…この色で大丈夫っすか？」
『うん。いつもありがとう。なかなか自分で買いに行く時間が取れないから助かってるよ』
「ならよかったです」
ニコッと微笑んだ一郎くんに微笑み返すと、二つの慌ただしい足音が聞こえてきた。勢いよくドアが開き、そちらに視線を飛ばすと、そこにいたのは二郎くんと三郎くん。一郎くんと犬猿の仲である碧棺左馬刻の弟ということもあり、よく思われてないみたいだけど…僕は、二人とも仲良くしたいと思ってる。
「げ、碧棺A…！」
「なんでお前がここにいるんだよ」
ペコリと小さくお辞儀をすると、わかりやすく嫌そうな顔をされた。正直、こういう反応されるだろうなという予想は着いていたけれど、実際にその反応をされると少しだけ辛かったりする。だけど、まあ、仕方ないとは思う。
「こら、二郎、三郎、失礼だぞ」
「ごめんよ、兄ちゃん…」
「す、すみません、一兄…」
「謝る相手が違うだろ？」
「…あー…ごめんな」
「わ…悪かったな」
『ふふ、気にしてないよ』
兄弟というより、親子みたいなやり取りに、思わず笑みが零れる。そんな僕を見て、三郎くんは心底不思議そうに眉をしかめた。
そうだ、新しい色が入ったことをお知らせしないと。けど、サンプルがなぁ…あ、良いこと思いついた！
『一郎くん、追加の依頼をいいかな？』
「あ、はい！大丈夫っすよ」
『ありがとう。この新しい色、試させて欲しくて。黄色だから…出来れば三郎くんにお願いしたいかな』
正面にいる一郎くんの目から視線を外し、ちらと三郎くんの方を確認すれば、さっき以上に盛大に眉をしかめていた。
これは…ダメそうかな、なんて、半分くらいは諦めていた。けれど。
「はぁー…別にいいぞ」
『え、本当に？』
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作者名：眠兎 | 作成日時：2022年1月6日 21時
