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あれからしばらくして、兄さんがお風呂から出てきた。
『ご飯食べよっか』
「ああ」
『「いただきます」』
席につき二人同時に手を合わせると、若干冷めてしまったオムライスを一口食べる。自分で言うのもなんだけど、すごく美味しい。今日は上手く作れたし、兄さんも美味しいって思ってくれてるといいんだけど。
顔を上げ兄さんの方を見ると、オムライスを食べ口元を綻ばせていた。僕の視線に気づくと、にっと微笑んだ。
「やっぱAの料理は美味いな」
『ふふっ、それはよかった』
晩御飯は一緒に…それが家のルール。もちろん、外食とか、そういう場合は仕方ないけど、出来る限り一緒に食べるようにしている。合歓がいた頃からそれは変わらない。兄さんと一緒にいられる短い時間。僕はこの時間が大好きだ。
それから僕達は、あっという間にご飯を食べ終わった。ちゃちゃっと洗い物も済ませると、ソファに座る兄さんの隣に座った。
「そういや、今日は大丈夫だったか?」
『ああ、偏頭痛のこと?うん、最近は結構平気』
「そうか。ならよかったわ」
そんな会話だけして、また無言になる。兄さんはいつの間にか淹れていた珈琲を片手にスマホをつついていた。特にやることもなかったので、僕はそんな兄さんを横目に、自室から持ってきた本を読んでいた。
時間も忘れてのめり込んでいると、気づいたら11時過ぎくらいになっていた。良い子はもう寝る時間。という訳で、僕もそろそろ寝ようかな。そう思い、立ち上がる。
「もう寝んのか?」
『あ、うん。おやすみなさい』
「おう、おやすみ。俺もそろそろ寝っかな」
『に、兄さん…』
「あ?」
『…やっぱりなんでもないや。おやすみなさい』
「一緒に寝てぇんだろ?ったく、お前はいつまで経っても甘えん坊さんだなぁ?歯ァ磨いてくっから先ベット行ってろ」
『うん…ありがとう』
ぐっと身体を伸ばし珈琲を入れていたマグカップをシンクに持っていきがてら僕の頭を撫でた。そんな兄さんに言われた通り、僕は自室に戻り本を棚に戻すと、ベットに潜った。
僕の言いたいことを察してくれて、気を遣ってくれて…兄さんは本当に、優しい人だな。
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作者名:眠兎 | 作成日時:2022年1月6日 21時