捨てられない -まふまふ- (ページ10)

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バイバイ。と彼女と別れ、タクシーに乗り込み家へ向かう。

今日さっきまでライブをしてた筈なのに、それが遠い昔に思える程とても濃い日だった。

すぐそこまでやってきている大阪公演。
それに集中出来るかも危ういくらいに、心も頭も彼女でいっぱいだった。

追加しただけで、何ひとつとしてメッセージのないトーク画面を開く。
今日はありがとうって、それくらいは送っておかないと。
そう思い、何故だか緊張して震えている指をゆっくりと動かしながら、一つ一つ丁寧に文字を入力する。

送信ボタンをタップした直後に、家に着いてお金を払ってソファに腰を下ろした。

すぐに返事がくる筈もない。

シャワーでも浴びて、ゆっくりしよう。
いや、今日くらいは湯船に浸かるのもいいかもしれない。

一通りTwitterを見て、スマホを充電器に差し込んでから、脱衣所へ向かった。

鏡に映る僕は、情けないほど彼に比べて弱々しくて、こんなんじゃ好きな人1人も守れやしないだろうな。と思う。

彼女のタイプは案外ああいう人だったのかもしれない。
だからきっと僕が嫌になったんだ。

「うぅ、自分で考え始めて病みそう……」

気にしない。とは思っても、気にしてしまうもので。
鍛えてみる？とは思ったけど結局続かないのは目に見えてるし。

全部水に流してしまおう。とシャワーを出せば、本当に水を全身に浴びて、お湯が出るように設定してた筈なのに。と何処か嫌な胸騒ぎを感じつつも、その胸騒ぎですら水に流してしまった。