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«岸side»
撮影が終わり、神と海人は個人の撮影があるので、一足先に準備を終わらせて楽屋を出て行った。
「紫耀、終わった?」
「まだー」
「先に下、行っとるよ?」
「うん」
一緒に帰る約束でもしたのだろうか、2人のその会話を聞きながら俺も帰る準備を進める。
廉が先に楽屋から出て行き、楽屋には紫耀と俺の2人だけが残る。
「ねぇ、岸くん」
「ん?」
「俺を怒らせて、楽しい?」
「…何の話?」
手を止めて紫耀を見れば、また敵意むき出しの顔で俺を見ていた。
「廉のこと、好きなの?」
「好きだって言ったら、紫耀はどうする?俺に譲ってくれる?」
「譲るわけないだろ」
「それは残念だな」
笑って準備を始める俺の傍で、紫耀が立ち去る気配を感じた。
「悪いけど、廉は今日で俺のだから。ずっと待ってたんだから、早く言わなきゃね。岸くんは、次の恋見つけなよ。廉以上に可愛い子が見つかれば、だけどね?」
余裕そうな笑みを浮かべて楽屋を去る紫耀の背中を見つめる。
「腹立つ…」
あの2人の間に入れないことは分かっていたけど、ああやって見せつけられれば、ただただ悔しい気持ちでいっぱいになる。
あいつは…紫耀は、ずっと廉の気持ちに気付いていた。
廉のことを、俺よりも分かりきっていた。
廉以上に可愛い子なんて見つかるはずもなければ、居るはずもない。
俺が出会ってきた人達の中で、廉は俺が宇宙一に可愛いって思った人なんだから。
その翌日、紫耀と廉から『付き合うことになった』と報告を受けた。
海人と神は心の底から嬉しがって祝福していたが、俺はそれほど嬉しくはなかった。
『おめでとう』とは言っておいたが、それに感情がこもっていないことなんて、メンバーの異変に敏感な廉はすぐに気付くだろう。
「岸さん、具合悪いん?」
ほらね、廉はこういう奴だよ。
彼氏が居るのに、そんな可愛い顔で他の男に近付いたら駄目だよ。
「廉」
「具合は悪くないから、早く行きなよ。紫耀が怒っちゃうよ。鬼だよ、鬼」
「…分かった。無理せんでな!」
俺の肩を優しく叩いて、廉は紫耀の元に向かった。
呼び方が優太から岸さんに変わっているのは、紫耀に何かしら言われたのだろう。
あーあ、寂しいな。
廉が…欲しい。
廉を膝に乗っけて楽しそうに話している紫耀を見ると、そこは俺の席だったのにと紫耀を妬ましく思ってしまう。
「しょうれん、お構いなしだね」
神が俺の隣に座って、そう話しかけてきた。
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作者名:弥生 | 作成日時:2022年11月13日 12時