#006# ページ7
．
「 、え 」
男の目に哀しみが宿り、思わず声が漏れる。彼は実に誠実で優しい人間だ。よほどショックを受けた顔をしていたのか、何で嬢ちゃんが泣きそうになるんだ、と再度頭を撫でられた。
「 いやぁ、親父から家継いだんだけど、こんなんじゃ暮らしていけねぇ。他の道を探す 」
若干諦めの滲んだ声、そっと自分の店に向かって目を細める男。ショーウインドーの更に先、店の中には船の模型や値段。レジの横に見たこともないような絵画があった。
「 ………おじさん 」
「 なんだ? 」
「 店の船全部ちょうだい 」
「 え!?流石に嬢ちゃんは全部買えないと思うけど 」
その言葉を遮って後ろのリュックサックから袋を取り出す。取り出す時にジャラジャラと音がした。袋を開くと、中にはばらばらの通貨。札束も入ってたしコインも入ってた。
「 嬢ちゃんがなんでこんなに……!? 」
「 ほら、ちょうだい 」
袋を押し付けてそう言うと、男はそれをじっと眺めた後、ため息をついて笑った。と言っても口角が緩んだだけで声を上げるような事ではない。男は袋を手で押し返すと、言った。
「 オススメがあるんだ。ソイツ、貰ってってくれよ。金はいらねぇ 」
閉店間近でヤケクソになっているのかと正気を疑い何度も聞いたが男の返答は断固として変わらず、結局店の一番イイ物を貰っていくことになった。
「 ほんっとうに、いいんですね? 」
「 嬢ちゃんもしつけぇな 」
耳に指を突っ込みながらため息をついた男は来い、と言い、港へと連れていってくれた。男はどうやら知り合いが多いようで、道端から挨拶されたり話しかけられたりとしていた。
「 コレだ 」
「 うわ……!! 」
船は大きくなかったが小さくもなく、少なくとも私一人で冒険するには大きい。船の中を見せてくれ、中はとてもキレイでキッチンから風呂まで設備が整っていた。ついでに、と立て掛けてくれた絵画は良いのか悪いのかよく分からない。
「 じゃあな、船の名前はAがつけてくれ 」
おぼつかない足取りで自分の店の方へと行く男性を姿が見えなくなるまで見つめていた。はて、彼とはどこで会っただろうか。
甲板に出ると穏やかな海がよく見えた。舵を握り、未知なる場所へと向かう。これが、旅の始まりだった。
＿＿はず、なのだが。
海に対して経験も知識もない女が海で生きていけるか。無理。比較的穏やかな海だったから良かったものの、無茶苦茶な操縦の果て、着いたのは無人島だった。
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はるさめ(プロフ) - 操菜 荘椏さん» 入院されていたのですね…。作品より何より操菜様が元気でいることが一番なので、気長に待っております！お大事に＾＾ (2019年8月30日 21時) (
レス) id: 52d4e74b12 (このIDを非表示/違反報告)
操菜 荘椏(プロフ) - はるさめさん» ありがとう、ございます……!!そう言っていただけて感激でございます!!私今現在入院してるので、少々お待ちください!! (2019年8月30日 8時) (レス) id: 973a3c6c76 (このIDを非表示/違反報告)
はるさめ(プロフ) - 言葉選びとか主人公の雰囲気、すごく好きです！続き楽しみにしてますので無理せず頑張ってください！ (2019年8月29日 15時) (レス) id: 52d4e74b12 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：操菜 荘椏 | 作成日時：2019年5月28日 13時
