～人外しぇあはうすの住民達の日常～ Part2 (ページ6)

今日:2 hit、昨日:0 hit、合計:3,819 hit

第56話昔のこと【神】ページ6

命は先程からずっと謝りながら下を向いている。
命をこういう心情にさせた張本人、たけるは、相変わらずにやにやした顔をしながら笑い声を上げた。

｢いやぁ、面白いなぁ。世界を作り上げた消えた天界の2人の王の子孫がこの場所に居るだなんて。とんだ悲報だ｣

はは、とたけるが最後まで堪えきれなかった笑いが漏れる。
俺はたけるを睨み付け、一度目を閉じた。
そのまま深呼吸を数回繰り返して、なるべく優しい声で命に話しかける。

｢なぁ命、そんなに悲しそうな顔をするな。俺は怒ってないぞ?｣
微笑みかけながら言えば、命は濡れた目を擦りながら｢ほんとですか……?｣と言った。

｢当たり前だろう。寧ろ謝るのは俺の方だ。……俺が隠していたせいでこんな事に巻き込んでしまって済まない｣
バツが悪くて目をそらしながら言えば、命は｢おじいちゃんはわるくないです!!｣と慌てて否定してくれた。

話を続けようと口を開く。
すると、たけるの方から何かが飛んできて慌てて命を突き飛ばした。

ﾀﾞｧﾝと重い音が響く。
飛んできたものはナイフに酷似している物で、ちょうど命を突き飛ばした事で俺の腹に当たった。

｢なに、感動の再開とかさせると思ったぁ? ざぁんねんでしたー!! ここじゃ俺以外能力は誰一人として使えない様にしたからそんな事させませぇん!! だからそこの出来損ないの劣等生も初代王の娘も、後ろのドアでこそこそしてる死神も俺の言いなりになって貰いますぅー!!｣

後ろのドアでこそこそしてる死神、と言われていたが、今の俺はそんな事を出来る状態じゃなかった。
先程当たったナイフに当てられた箇所がズキズキと痛む。
呼吸も浅くするしか出来なくて、とても苦しい。

｢おじいちゃん!!｣
｢暦君!!｣
2人が慌てて駆け寄ろうとしてくる。
それをたけるが許す筈もなく、鋭い声で｢うごくな!!｣と言ってナイフを投げていた。

｢動かないでねーお嬢さん達。痛い思いしたくないでしょー?｣
変わらずニタニタしながらたけるは俺に近寄ってくる。
痛みで蹲っている俺の髪を持ち上げて、たけるはこう言った。

｢今からお前の悲惨な姿を皆に見て貰おうねぇー?｣