第53話 どうしようもない 【神】 ページ3
「う、げほッ」
むせながら起き上がる。辺りを見回すと、どうやらそこは天界の牢獄だった。
ここは普段であれば、地獄から潜り混んできた魔物の様な怪物を閉じ込めて置くところで、実際であれば勝手に許可なく立ち入る事は出来ない、とされている場所だ。
もちろん拷問の様な事をして見世物にする場合もあるので、そんな目も当てられない様な生々しい物が付着している器具もある。
目をそらしながら檻の外を見る。廊下の方面は見世物小屋の様な感じになっており、ちょうど正面は軽いホールの様になっていた。
椅子やテーブルも並べて置いてあって、まるで俗に言う宴会会場だった。
その檻の外に1人の男が現れる。その人物は俺と、おそらく命を天界に連れて来た男だった。
「やぁやぁ、お目覚めかいプリンス」
いや、プリンセスの方が正しいかな? と相変わらず昔と変わらないふざけた口調で馬鹿にしてくるこいつ。
名前を出すのも、思い出すだけで気持ちの悪い物が込み上げて来そうだ。
「……昔よりは面白い冗談を言う様になったな、たける。だがそんなくだらない話に付き合っている暇は無い。……命はどこにやった」
精一杯睨みつけながら冷たい口調で言う。それでも目の前のたけるは「おお、怖い怖い」なんておどけて見せる。
「そんなに怒んなよ。俺とお前の仲だろ?」
「お前と深い仲を持った覚えは無い。自分より立場の弱い奴を見下す事でしか自我を保てない愚か者が」
「はは、愚か者はどっちだよぉ。期待の重圧に耐えられなくなって汚い下界に逃げた屑はお前だろ?」
そう言われると何も言い返す事が出来なかった。
その通りだ。俺は逃げたのだ。
今まで劣等生だと言われて蔑まれた過去からも、俺の方が周りの奴らの階級よりも遥かに上だったという事実からも、それが発覚した為に更に苛められる様になった現実からも、周りからの期待や叱咤の重圧で潰れる近い先訪れるであろう未来からも。
全てを捨てて逃げたのだ。
「そんな話、今は関係ない。……命はどこだと聞いている」
「あー、あのちびっ子? うるさいからテキトーな所に閉じ込めといたよ。まぁお前よりは遥かに見つけ安い場所だから安心しなよ。いざとなったらお前、本来は捨てられてもおかしくないくらい異端なんだから」
はっと吐き捨てる様に言うたける。
その目からは、明らかな俺への嫌悪が向けられていた。
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蒼狼(プロフ) - 狐白尾 九さん» 待ちましょー (2015年11月17日 7時) (レス) id: 3ddba98499 (このIDを非表示/違反報告)
狐白尾 九(プロフ) - 蒼狼さん» まあ、気長に待ちますかー( ´ ▽ ` ) (2015年11月16日 21時) (レス) id: e0e7a8636c (このIDを非表示/違反報告)
蒼狼(プロフ) - 狐白尾 九さん» 多分そうっすね〜 (2015年11月16日 16時) (レス) id: bf3f20facb (このIDを非表示/違反報告)
狐白尾 九(プロフ) - 蒼狼さん» 他の人は、色々と忙しいんですね(多分) (2015年11月16日 16時) (レス) id: e0e7a8636c (このIDを非表示/違反報告)
蒼狼(プロフ) - 狐白尾 九さん» そうっすよ〜 (2015年11月16日 16時) (レス) id: bf3f20facb (このIDを非表示/違反報告)
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