【w。r。w。r。d】白旗を破り捨てる。【g。r】 (ページ43)

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鬱とAの仲がいいのは承知の上だった。
しかし、こうもあまりにも仲がいいとどこか込み上げてくるものさえある。

「あ、Aちゃんそういえばあれどうなったん？」
「あれ...？」
「友人が誘拐されそうになって思わず助けてしまってバレたって話、」
「あぁ...ただ感謝されただけで特に何も無かったよ、次に会った時は普通に接してくれたし」
「そっかあ。良かったな。怖がれるんとちゃうかーって心配してたもんな」

へらりと笑う鬱にAは嬉しそうに笑い返した。彼女が対人関係を築くことを怖がっている理由は過去に理由があるが、それは異性だけでなく同性もだった。もともと好まれなかった容姿と、男と対等なくらいの身体能力。怖がられても無理はない。怖がられることを恐れて今まで隠していたAが初めて親友に打ち明けた時に、予想外のしてくれた反応は今でも覚えている。親友は顔を真っ赤にして凄いだなんて褒め称えたのだ。その時に流した涙でさえも感覚が蘇るような気さえする。

「ありがとね、大先生。」
「なにがー？」
「ほら、相談に乗ってくれたり気にかけてくれたりして申し訳ないなって」
「ええのええの。」

大層なことしてへんしな。
そう言って苦笑いを浮かべる鬱は元々グルッペンからの命令で近づいたため、きっかけはあまり宜しくない。それを伝える勇気もないし、きっとAは自分のことを優しい人だと勘違いしているということも知りながらそれを打ち明けることは出来なかった。きっと、彼女との関係が壊れてしまう。いつの間にか惚れ込んでしまった彼女との関係が壊れてしまえば自分はきっとふらついた足取りで夜な夜な街を歩き周り女を求めるだろう。
...運が良かった、といえばそうなのだが。

「ほんと、ここに来て驚かされてばっかりでさ。」

Aが両手で持つカップには、赤い紅茶。
その水面には彼女の顔は映らず、怪しく水面が揺れ波紋を描くだけだった。