【w。r。w。r。d】白旗を破り捨てる。【g。r】 (ページ33)

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「...あの、もうそろそろ離れてくれへん？」
「嫌だ」

家に入ってソファに座ったはいいものの、自分に抱きついたまま未だぐすぐすと泣いているAにトントンは苦笑した。本当は手を伸ばして抱きしめてやりたいが、Aはショッピと随分仲がいい。彼のような性格の人物が好きなのだろうかとトントンは1人で悶々と考え、彼ならば抱きしめてやったりしないだろうと自分のアホらしさで手に力が篭もる。

「子供やないんやから。ほら、な？」
「...嫌だ」
「ったく...そんなにつらいことあったん？」
「ううん、」

久々にトントンに会ったから離れたくないだけ。
そんなことを言ってAは恥ずかしそうに目を逸らした。それを見たトントンはくすりと笑い、Aの頭をぽんぽんと撫でる。ドロドロとした熱く甘いなにかに溶かされそうだ。勘違いをしてしまいそうな自分を払い退け、思わず今までべったりとくっついていたAを抱きしめた。

「...ん、久しぶり」

そう言って、恥ずかしさを隠すように相変わらず小さいんやな、と言葉を零せば今は反抗する気もないのかAは少し顔を歪めるだけだった。昔はよく泣き虫だったトントンを抱きしめたものだが、今では逆の立場になっている。それは成長地よるものか、はたまた偶然の“今だけ”の出来事なのか。

「...ありがと」

生きていてくれて。
荒廃した世界で彼女の言葉は彼以外に影響を与えることも無く落ちた。