【w。r。w。r。d】白旗を破り捨てる。【g。r】 (ページ31)

今日:17 hit、昨日:2 hit、合計:99,781 hit

31 ページ31

「...グルさんまだあいつを勧誘したいん？」
「まぁ。アイツは確実に俺たちを動かすことになるからな」
「...ふーん」

グルッペンが肘をつく机の隅でトントンは書類を整える。彼に目を向けることなく、書類だけを視界いっぱいに広げたままの赤い瞳を持つ彼はどこか興味なさげに眼鏡を上げた。

「...あの人は俺達が関わってええ人間やないぞ」
「ほう。何故そう思う？」
「アイツは戦争孤児や。ひどい扱いも小さい頃されて、幹部として務まる人間やない。」
「無関心な割には知ってるんだな。」
「...昔はアイツと一緒やったから」

ぴたりとトントンは手を止めた。グルッペンもその言葉に硬直し、機械のように顔をトントンの方に向ける。彼の紅い瞳は歪められ、濁りきっていた。後悔と、自己嫌悪だけが彼の瞳の濁った紅をつくる。

「...俺も元々戦争孤児やろ。見世物にされた時たまたま部屋が一緒やった。多分、10才くらいまでは一緒におったと思う」

あそこじゃ日付とか分からへんねん。季節で変わる外見てなんとなーく見とった。あとは月やな。アイツは頭がよかったから月が周期的に形が戻るのに気づいて、管理人の言葉と照らし合わせて自分の中でなんとなく日付が分かるようにしとった。

「...俺より先にアイツが引き取られたんや。」

唯一の、心の支えだった。Aの笑いが、声が、存在だけが支えだった。シャオロンから聞いた話だと彼女はその後もう一度捨てられ、そこでシャオロンに引き取られたらしい。
1人になった時、幼かったトントンは孤独感に襲われた。先に引き取られたAを恨んだこともあった。

「...アイツは俺の、希望だった。」

強くなったら迎えに来るねって。
女のくせに強がってそんなこと言って、俺は冗談だと聞き流して笑ってやった。彼女らしい最期の言葉だと思っていた。再開なんて、果たせない。そう思っていた。

「...優しすぎた。Aは優しかった。最初は愛想が悪かった俺にも笑ってくれて、優しくしてくれて。」

確かに彼女は、初恋の相手だった。