名探偵には嫁がいた。3【江戸川乱歩】

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『叔父様？ご飯冷めちゃいますよ？』



Aに声を掛けられて意識を取り戻す。

此の儘放置プレイなんてされて居たら福沢はきっと朝まで固まって居た事だろう。

確かに二人の雰囲気が前と違う、というのは見れば判った。

けれど、あまりにも平然と、当たり前のように、前からそうであったようにしているものだから、本当に付き合っているのか、はたまた乱歩の冗談なのか、いやそうであって欲しいとは思うものの、嘘か本当かがはっきりとは判らなかった。



「おい、A」



『はい？』



「乱歩と付き合っているというのは誠か」



『はい』



「つまり、恋仲ということか」



『はい』



「Aは、乱歩が好きなのか」



『はい』



「乱歩を愛しているというのか」



『はい』



足元がふらついた。

危うく倒れそうになった。

目の前がチカチカと点滅する。

乱歩がAを好いているのは判りきっていたが、まさかAが乱歩を好きになるとは思っていなかったとは云い切れないが、思って居たかった。

娘を嫁に出すような気分になったが、やっとか、という嬉しさが込み上げてきた。

＿＿待て。待て待て待て。

何故嬉しさが込み上げてくる。

乱歩にだけはAを渡すまい、と云っていたじゃないか。

それが今では乱歩にならAを渡してもいいと思ってしまっている。

時の流れとは不思議なものだ。

笑い合うAと乱歩が倖せそうだから、それでいいかと頰をほころばせ。

福沢はつくづく甘くなったものだと小さく溜息を吐き、倖せオーラが溢れ出る食卓へと足を進めた。

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