名探偵には嫁がいた。3【江戸川乱歩】

・ ページ36

Aが事情を説明する。



「乱歩が、風邪……どうすればいい」



分かりづらいが、顔をしかめる福沢。

風邪を引いた経験はあるが、看病をした経験はないのでどうすれば良いのかわからない。



『体温計と冷えピタと薬を持ってきてください。リビングの戸棚の上にあった筈です。汗をかいているようなので濡れたタオルもお願いします』



テキパキと福沢に指示を出すA。

自分が用意しても良いのだが、生憎乱歩に手を掴まれているので動けない。

福沢は云われた通りに体温計と冷えピタと薬とタオルを持ってきた。

Aはそれを受け取ると、乱歩に冷えピタを貼り、体温計で熱を測る。

ﾋﾟﾋﾟﾋﾟｯと体温計が鳴った。



『38.2度……かなり高いですね。まずは薬を飲ませないと。乱歩さん、口開けてください』



口元に薬を持って行くも、ふるふると首を振って落としてしまう。



『飲まないと治りませんよ？』



「苦いからやだ……」



『……子供ですかあなたは』



仕方ない、というようにため息を吐く。

この先の展開は何となくというか読めると思うが、Aは薬と水を口に含む。

そして、そのまま乱歩に口移しで飲ませた。

乱歩は突然のことに驚く。

そのままごくんと飲み込んだ。

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