名探偵には嫁がいた。3【江戸川乱歩】

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「ねぇ、あのさ」



立ち止まった僕にきょとんとするA。



「もっと、危機感持ってくれない？」



『危機感…ですか？』



「うん。今ね、Aはいろんな男にいやらしい目で見られてるの。皆Aのこと見てるの。Aは可愛いから見ちゃうのも仕方ないのかもしれないけど、僕は嫌なの。僕のAなの。僕以外見ちゃだめなの」



『はぁ…』



Aはよく判らないと云った顔をしている。

あー…どこか誰にも見つからない場所ないかな。

…あの子屋の陰とかいいかも。

とりあえずお昼食べてからかな。



「…やっぱ何でもない。忘れて」



未だに考え込んでいるAの手を引いて歩き出した。

歩くスピードが少し速くなった。

皆の元へ戻り、焼きそばとお好み焼きを渡す。

僕はAとお好み焼きを食べた。

もちろん、他の男や太宰に見せつけるようにあーんをしてもらった。



『あ、乱歩さん。ソース、ついてますよ』



Aはそう云って自分の頰をとんとんと指で叩く。



「…Aがとって」



『いいですよ』



指ですくうようにソースを取るA。



『えーと、ティッシュティッシュ…』



「あ、これ使うかい？」



『太宰さん、ありが』



太宰がAにティッシュを差し出し、Aが受け取ろうとした瞬間。

ぱくっとAの指をくわえて舐めた。



「…これでティッシュはいらないよね」



そう云ってにっこり笑った後、Aにバレないように太宰を睨んだ。

太宰の好きにはさせないよ。

……とことん邪魔するから。

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