【それは雨のせい】 ページ33
【side:ym】
嬉しかったり楽しかったりでいろいろ忘れてたんだ。
こんなときこそ慎重にならなくちゃいけなかったのに。
なんとか理由をつけてもう一度伊野尾ちゃんに話しかけるチャンスは与えられてる。
それと併せてまたメシ食いに来ない?って、
ちょっと距離感近くなったかんじで誘うチャンスもあると思ってる。
…問題はタイミングと、いかに警戒心を持たれないよう、下心に気づかれないよう自然に誘うかという点。
もしかしたらこの前のハグだって何こいつキメエって思われてるかもしれない。
あれは仕事がんばってのハグでもなんでもなく、
おれの気持ちが行動を抑えられなかっただけだから。
それが伝わってしまってたら、ちょっともう山田に近寄りたくないと思われてても仕方ないけど、ここはおれのでまかせを信用してくれた前提で進むしかない。
理由のひとつ目である、預かってる伊野尾ちゃんの服だって、
毎晩おれが抱きしめて寝てるから、もう何度も洗ってるし。
もはやおれんちの匂いになっちゃってるし、
これ以上ヤバいことに使わないうちに返してしまいたい。
ひとりの部屋のなかで彼の残像を追うのは少し楽しくて、
でもその後その何倍も虚しくて寂しくなる。
向いに座っていた伊野尾ちゃんの顔を思い出して、
「…好きだよ」
「ほんとはもうずっとまえからずっと好きなんだよ」
「うちに来てくれんの今でも信じられないくらい嬉しいし、ほんとはいつも帰したくないよ」
口に出してみると一気に現実感が増す。
我ながら重い。
そんな言葉をぶつけられる彼が気の毒すぎる。
だからせめてもう少し。もう少しだけでいいんだ。
一緒に過ごす時間が欲しい。
ドン引きされてもちゃんと気持ちが伝えられる覚悟ができるまで。
とはいえそこで諦められるとは思えないとこがまた問題なんだけど、それはまた別の話だ。
空でも見たら少しは気分が上向きになるかもと思ってなんとなくベランダに出た。
星がひとつも見えない曇り空が、まるでおれの心を反映してるみたいでちょっとガッカリだけど、広いこの空はあの人のいる場所にも繋がってる。
今何してるんだろう。もう寝てるかな。
そんなことを考えると少し気分が上がった。
我ながらチョロい。
ぽつり。
顔に水滴が当たる。
なんだよ水差すなよ。
手の甲で拭って部屋に戻った。
264人がお気に入り
この作品を見ている人にオススメ
「オリジナル」関連の作品
感想を書こう!(携帯番号など、個人情報等の書き込みを行った場合は法律により処罰の対象になります)
fde(プロフ) - 文頭に消し忘れが!見苦しくてすみませんでした。 (2020年1月19日 20時) (レス) id: 86fd086565 (このIDを非表示/違反報告)
fde(プロフ) - miporiさん» 感想あお礼が遅れてすみません。読んでもらえただけでも嬉しいのに感想までいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。近々続きをお届けできると思いますので、そのときはまたよろしくお願いします。 (2020年1月19日 20時) (レス) id: 86fd086565 (このIDを非表示/違反報告)
mipori(プロフ) - けいさん» こんばんは。fdeさんの書かれるお話が凄く素敵で更新される度にとても大事に読んでいます。胸がギュンっとトキメいて読んでいて楽しいです!やまいのの続きがとても気になります!続きを心待ちにしています。 (2019年11月17日 23時) (レス) id: bde1645221 (このIDを非表示/違反報告)
fde(プロフ) - 勝手に書いてるものに素敵と言ってもらえるこの嬉しさがどうか伝わりますように。あなたが考えるたぶん100倍超は嬉しいです!ありがとうございます。 (2019年11月13日 18時) (レス) id: 86fd086565 (このIDを非表示/違反報告)
けい(プロフ) - 素敵な作品に出会えて本当に良かったです(泣)応援してます!! (2019年11月13日 17時) (レス) id: a01bbaa610 (このIDを非表示/違反報告)
作品は全て携帯でも見れます
同じような小説を簡単に作れます → 作成
この小説のブログパーツ
作者名:fde | 作成日時:2019年3月23日 15時