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数日後の朝、借りてた服を持って車で山田んちへ向かう。
天気が良くてテンションも上がる。
部屋に通してもらって、まず忘れる前に、
「あ、これ借りてたやつね。ありがとう」
テキトーな紙袋に入れてきたそれを渡す。
「うん。おれも用意してあるよ」
それを受け取りながら、山田が言う。
仕事以外でのやりとりはこれで全終了だねって、勝手にその先を読み取った。
でもそうはさせねえよ？
おまえ甘えられると弱いよね？
知念限定なとこもあるけどさ。
だからはっきり言葉で冷たくばしっと拒絶されるまで、さりげなく甘えてみることにしたわ。
「すぐできるからちょっと待っててね」
「うん。あー楽しみ♪」
これは心の底からの本心なんで必要以上に浮かれた声になった。
しばらくソファーで目を閉じて、キッチンから聞こえる山田が立てる音を聞いてて、それもふわふわ楽しい気分だったけど、どんなかんじでやってんのか見たくなったから、そっと近づいて後ろから見る。
黙ってんのも悪趣味かと思って声をかけた。
「見てていい？」
「うわびっくりした。…え？いいけど、べつに面白くねーよ？」
「おれは面白い」
「ふーん」
キッチンに立ってあれこれやってる山田を、ちょっと離れたところで見ながらなんとなく話しかける。
「黄泉竈食(よもつへぐい)って知ってる？」
「…聞いたことあるような気もするけどたぶん知らねーな。
なに？」
慣れた手つきで包丁を動かしながら応える山田に、
黄泉の国の竈で煮炊きしたものを食べてしまったら
もう現世には戻れない。
それで永遠に別れなければならない悲しくて薄情な神話を大雑把に話す。
「…振り返っちゃだめみたいなとこは聞いたことある気がする」
山田の部屋は黄泉の国じゃないし、どこで振り返ろうが永遠の別離には至らないけど、おれにとっては同じくらい異世界に等しい。
そこで飯を食ったおれは、おれの気持ちはもう元の世界には戻れない。
そんな感覚。
いや、単におれがそんなふうに勝手に特別なことにしたいだけだから、山田に言ってもわかるわけがない。
「…責任取れよな」
「ん？なんか言った？」
「…いや、腹減ったなって」
「ごめん、もうちょい待ってて」
「おう、急げよ」
「うん」
…嘘だよ。急がなくていいよ。
できるだけ見ときたいもん。
こっちを見てない山田を。
今現在、この世界でおれだけが見ることを許された山田を。
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fde(プロフ) - 文頭に消し忘れが！見苦しくてすみませんでした。 (2020年1月19日 20時) (
レス) id: 86fd086565 (このIDを非表示/違反報告)
fde(プロフ) - miporiさん» 感想あお礼が遅れてすみません。読んでもらえただけでも嬉しいのに感想までいただけて本当に嬉しいです。ありがとうございます。近々続きをお届けできると思いますので、そのときはまたよろしくお願いします。 (2020年1月19日 20時) (レス) id: 86fd086565 (このIDを非表示/違反報告)
mipori(プロフ) - けいさん» こんばんは。fdeさんの書かれるお話が凄く素敵で更新される度にとても大事に読んでいます。胸がギュンっとトキメいて読んでいて楽しいです！やまいのの続きがとても気になります！続きを心待ちにしています。 (2019年11月17日 23時) (レス) id: bde1645221 (このIDを非表示/違反報告)
fde(プロフ) - 勝手に書いてるものに素敵と言ってもらえるこの嬉しさがどうか伝わりますように。あなたが考えるたぶん100倍超は嬉しいです！ありがとうございます。 (2019年11月13日 18時) (レス) id: 86fd086565 (このIDを非表示/違反報告)
けい(プロフ) - 素敵な作品に出会えて本当に良かったです(泣)応援してます！！ (2019年11月13日 17時) (レス) id: a01bbaa610 (このIDを非表示/違反報告)
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作者名：fde | 作成日時：2019年3月23日 15時
