白い花々 【暗殺教室】 2

蝶々 ページ9

「内容にもよるわ
でもそんな失礼なこと事しない」



生きてきた記憶がふと立ち上がった
土を踏みしめた記憶だ
仲間の死体がゴロゴロと転がり
生きるか死ぬか殺すか殺されるかの選択を
迫られた軍人の記憶



「…初めて君に会ったとき
吸い寄せられるような感覚に襲われた」



形の良い唇から吐き出されるため息に
諦めの意思を感じた
笑われてもいいと自棄を含み
融けてしまう



「糸で引っ張られたような…
一目惚れのような…それ以上のものを感じた
しばらく動けなかった

僕はそれを運命だと思った」



「君も僕を好きになるだろう？」




揺れ動く瞳に映る私が驚いていた
触れる指先に頬が触れる
熱を持った指が私の柔らかい所をつつく
心の奥の暗くて深い所を




「…さぁ…」




掻き乱さないで欲しい
私の知らない柔らかい所に
触れないで欲しい





戻れなくなってしまいそうで、怖い

いや、もう戻れないのだけれど




「君が好きだ」

「何度でも言う」




いたずらに笑う彼が滲む




「…帰ろう」



いつもの無表情に戻り、鞄に荷物を詰め込む
その言葉を聞いてあわてて帰り支度を始めた



生徒がほぼいなくなった校舎を歩く
廊下を歩く上履きがシャキッと擦れる
独特の音を響かせて




「…話してくれてありがとう」



ローファーに履き替えて校門に向かう
歩くスピードを合わせてくれる彼は
優しくも黒い





彼は静かに頷いた

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