白い花々 【暗殺教室】 2

蝶々 ページ21

茅野カエデside


修学旅行が無事に幕を閉じた、
その数日後

いつものように、ただ帰り道を
Ｅ組から校門までの長い下り坂を
歩いていただけだった





「…！！」






それは、突然。

背中が、
鞭を打たれたような感覚

状況が理解できないまま
背中を押されたように
体制を崩し道ではない森の中を
ゴロゴロと転がっていく


何をされた？

わからない


ただ顔に傷がつくのを恐れ
必死に腕でガードをしながら
転がる

数秒後に大きな木の幹に背中をぶつけた
思わず嗚咽が零れ目を見開く
痛みにうずくまり柔らかい土を
握りしめた



「…はぁ…」


転がっている間止めていた
呼吸を再開する
酸素を体が欲しがっている

過呼吸が落ち着いたところで
顔を上げた


そこにいたのは、


可愛らしいうさぎのお面を
つけた全身真っ黒な服装の人間



「…うそ…」




見た目とかそんなことはどうでもいい
真っ先に目に入ったのは
その人間が左手に持つ物だ




それは、私の、黒い触手

私が植え付けた、触手だった



「…！！」



それが何かを理解してすぐに
うなじを触る
指先に触れる触手はもう再生していた



「…なんで…！」


触手は、私の触手は髪の毛で
隠れて見えないはずだった
私の触手は父でさえも、
知らなかったはずだ


なんで…！

私が触手持ちだって…




「…本当に切れるんだ
このナイフ…」



可愛らしい声
驚く事にその声の主は
私の触手を切り落とした人物で
女性だった

ナイフを指先で遊び
クルクルと回す



「…殺し屋…？」




「雪村あかり」


私の呟きは掻き消され
自分の、本名が相手の口から零れた
私が今まで積み上げてきた物を
全て、この人は蹴散らした

自分が雪村あかりである事を

知られてしまっている


その人は
ナイフを持ち直し
刃先を真っ直ぐ私に向ける


「…は！？」


そうして強く地面を蹴り
私に目掛けてナイフを投げた


"殺られる"


ナイフを触手で掴んだ時に
私の触手が感じ取った
それは、殺意だった

私がこの人を殺さないと、
この人に私が殺される

相手は服の中に隠された沢山のナイフを
次々に私へと投げつける
それらを私の触手が全て跳ね返す


さっきの背中の衝撃は、
相手が私のうなじに植え付けてある触手を
切り落としたもの

そして、殺意

今何故か私を攻撃してくる相手が
私に向けた殺意だった



その殺意が、私を貫いた

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