白い花々 【暗殺教室】 2

蝶々 ページ12

渚side


「あ…」


買いたい漫画があった
頭文字から探して自分の身長より
数センチ上の棚に陳列しているのを発見し
手を伸ばす


指先が本に触れると同時に
ひんやりとした感触が手の甲をつつく


視界の端に細く白い綺麗な指先が残っていた
それを目で追っていくと、
当然、人間の顔に辿り着く



「あ…」



もう1度、マヌケな声を零した
それが自分の声だと気付いたのは数秒後で
その数秒の間僕は固まっていたのだろう



「この本、君も好きなの？」



申し訳なさそうに苦笑いを浮かべる人を
僕は知っていた

返事を忘れて彼女の手の中にある漫画を
差し出され呆然と受け取る



「…あ、いいの？これ」



我に返り、咄嗟に出た言葉
質問を質問で返してしまった、と
後悔に飲み込まれる



「もちろん！
あの…椚ヶ丘学園だよね？その制服…」



彼女の目線は自分の
ネクタイに向けられていた
彼女も同じ制服を身につけている



「あ…うん、そうだよ」


「やっぱり！この漫画好きな人周りにいなくて寂しかったんだ！

私、この主人公の決めセリフが大好きなの」



その言葉を耳にして、胸が弾んだ
頬が紅潮し、前のめりになって
気持ちを伝える



「僕もだよ！
僕の周りもにこれが好きな人がいなくて！
僕もこの主人公の決めセリフが大好きなんだ！」



興奮していたため
我を忘れて大きな声を出してしまう
一瞬彼女の瞳は大きく開いた
そうして目を細めてニッコリと笑う



「ねぇ、この後時間ある？」



唾を飲み込むと、喉が音を立てた



＿＿＿＿＿＿＿＿



近くのカフェに移動した僕らは
すっかり意気投合し、最新刊の漫画を
一緒に読み、感想を言い合った


1時間半は語ったと思う
自分と同じ漫画を愛していた事
その共通点が見つかった事が嬉しくて
つい早口になってしまったけれど
そんな僕を彼女はうんうん、と
大きくうなづきながら真剣に聞いてくれた



「…はぁ〜、つい興奮しちゃった」



照れ笑いを見せながら
注文した飲み物のストローを口につける



「あ、そういえば名前聞いてなかったよね
君、名前は？」



上目遣いの、甘えているような表情だった
だけどそれが僕を凍らせる



一気に現実に引きずり戻された
聞かれることは心のどこかでわかっていたのかもしれない
だけど、見て見ぬふりをした






そうだ、僕は＿＿＿
エンドのＥ組






彼女はＡ組だ
注目を集めている人物
だから初めて会った時も誰だか知っていた

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